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ANA、国内線の運航ダイヤの修正案を立案するAIシステムを本格稼働
全日本空輸(ANA)は、悪天候などで運航ダイヤが乱れた際に運航スケジュールの修正案を立案するAI(人工知能)システムを開発した。2025年7月から国内線で本格稼働させている。AIシステムによる修正案を基にオペレーション担当者の意思決定を効率化し、安定運航による品質向上を実現する。2025年7月15日に発表した。
全日本空輸(ANA)は2025年7月、国内線を対象に運航ダイヤの修正案を立案するAI(人工知能)システムを本格稼働させた(図1)。悪天候などにより突発的なダイヤ乱れが発生した際に、早期に運行ダイヤを修正し安定運航を確保するのが目的だ。本システムの導入により修正案の検討に要する時間を最大で70%削減できる見通しだという。
本格稼働したAIシステムは、状況に応じた運行ダイヤの修正案を複数生成する。オペレーション担当者は、それを基に最適な新運行ダイヤを作成し実行する。修正案の策定においては、航空機の運航スケジュールや整備計画、乗務員の勤務計画、空港の滑走路・駐機場の状況など、ANAが保有する運航関連データを統合的に扱う。気象データや航空路制限といった外部情報も取り込む。加えて修正案の策定過程で、ダイヤ変更に伴って発生する整備や乗務員の割り当て計画も併せて修正する。
本格稼働に向けた実証実験を複数回実施した。結果、AIシステムが立案する修正案の品質が人手による案と同等の水準になったことが確認できたことから正式導入を決めた。今後は、大規模な運航乱れや気象変化に対しても、同システムを利用していく方針だ。台風の進路や速度が変化した場合にも、修正案を基に継続して判断を重ねることで柔軟な対応が可能になるとしている。
ダイヤ乱れ時の対応はこれまで、10年以上のキャリアを持つ熟練オペレーターの経験とノウハウに頼る部分が多く、限られた時間内で複雑な条件を精査し、最適なダイヤを手作業で立案してきた。対応に時間を要し、特に大規模な遅延や欠航が生じた場合は数時間にわたる調整業務が求められていた。AIシステムの導入で、心理的負担が大きいオペレーション担当者の業務軽減にもつながると見込んでいる。
システム構築プロジェクトは2019年に開始していた。開発には日立製作所と日立コンサルティングの協力を得ている。
企業/組織名 | 全日本空輸(ANA) |
業種 | 交通 |
地域 | 東京都港区(本社) |
課題 | 台風など突発的な要因により運航に乱れが生じると、限られた時間で複雑な条件を精査し修正案を作成しようとしても、熟練オペレーターの経験とノウハウに頼らざるを得ず、調整に時間がかかっていた |
解決の仕組み | 航空機の運航スケジュールや整備計画などに気象データなども加味して分析することで、運航ダイヤの修正案を立案できるAIシステムを開発する |
推進母体/体制 | ANA、日立製作所、日立コンサルティング |
活用しているデータ | 航空機の運航スケジュール、整備計画、乗務員の勤務計画、空港滑走路・駐機場の状況、気象データ、航空路の制限情報など |
採用している製品/サービス/技術 | -- |
稼働時期 | 2025年7月(国内線での本格稼働時期) |