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飛島建設、工事現場のデジタルツインを扱うクラウド基盤を開発

DIGITAL X 編集部
2025年8月4日

飛島建設は、工事現場デジタルツインを扱うためのクラウド基盤を、土木用システムなどを手掛ける応用技術と共同開発した。現場の状況を示すBIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)データを共有し、遠隔地からの進捗確認や建設機械の稼働シミュレーションなどに利用し、生産性の向上を図る。

 飛島建設が開発した「サイバー建設現場」は、BIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)データやカメラ画像などから再現する工事現場のデジタルツインを扱うためのクラウド基盤(図1)。デジタルツインを使って、遠隔地から工事現場の進捗状況を確認したり、計画段階でのシミュレーションや設計変更に伴う影響を確認したりすることで、工事関係者間の早期の情報共有を進め生産性の向上につなげるのが目的だ。

図1:飛島建設が開発した「サイバー建設現場」は工事現場のデジタルツインを扱うためのクララウド基盤である

 サイバー建設現場が扱う情報は、建設現場のBIM/CIMデータのほか、施工の実測値や工事の進捗・施工状況、カメラで撮影したリアルタイム映像や、位置情報(GNSS)、各種計器の計測データ、天候・騒音など現場の環境情報、ICT施工によるデジタル情報など。これらの情報をBIM/CIMデータに紐づけることで、関係者のそれぞれが必要とする情報を確認・共有できるようにする。

 これらの情報を元に、例えば河川の水位データを取得し水面上昇を3D(3次元)モデルや4D(4次元)モデルとして確認したり、建設機械類を3Dモデルを組み合わせて現場で干渉や配置をシミュレーションしたりもできる(図2)。各種データの確認・共有にはCAD(コンピューターによる設計)ソフトウェアや高性能なPCは不要だという。

図2:河川の浸水をシミュレーションする機能の画面イメージ

 サイバー建設現場では、図面やBIM/CIMモデルを、クラウド型の建設ドキュメント管理サービス「Autodesk Docs」や施工管理向けデータ基盤「Autodesk Construction Cloud」にアップロードし、操作・閲覧する。プロジェクトレビューソフト「Autodesk Navisworks」(いずれも米Autodesk製)で工程情報をBIM/CIMモデルに付与して作成した4Dモデルにも対応し、4Dモデルを活用した計画時や設計変更時のシミュレーションができる。

 工事進捗に伴ってBIM/CIMデータを変更・更新した際も最新情報に保ち、関係者間での齟齬(そご)をなくす。

 サイバー建設現場は、木用システムなどを手掛ける応用技術と共同開発した。データ基盤「Autodesk Construction Cloud」(米Autodesk製)を基盤に、図面やBIM/CIMデータなどを管理する「Autodesk Docs」(同)、プロジェクトレビューのための「Autodesk Navisworks」(同)などを利用している。

 飛島建設がサイバー建設現場の開発に取り組み始めたのは「令和4年度荒川第二調節池排水門及び囲繞堤新設工事」の受注時から。実施項目に含まれた「BIM/CIM活用工事」に対応するためだ。同工事では、地盤改良や盛土、地盤沈下、コンクリート打設などの情報を一元管理したとしている。

 今後は、より幅広い建設プロジェクトに対応できるよう、種々のコンテンツやシステムとの連携などの機能拡充を進める。将来的には、国土交通省のBIM/CIM活用促進施策や「国土交通データプラットフォーム」とのデータ連携を図りたい考えだ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名飛島建設
業種製造
地域東京都港区(本社)
課題BIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)データをはじめ建設現場の状況を容易に確認・共有することで、工事関係者間の齟齬(そご)を解消し、生産性を高めたい
解決の仕組みBIM/CIMデータや現場の状況を示す画像や機器の稼働データなどを一元管理し、現場のデジタルツインを構築することで、関係者間でのデータ共有やシミュレーションによる事前確認などを可能にする
推進母体/体制飛島建設、応用技術
活用しているデータBIM/CIMデータ、施工の実測値、工事の進捗・施工状況、カメラ映像、位置情報(GNSS:全球測位衛星システム)、各種計器の計測値、天候・騒音など
採用している製品/サービス/技術施工管理向けデータ基盤「Autodesk Construction Cloud」(米Autodesk製)、建設ドキュメント管理サービス「Autodesk Docs」(同)、プロジェクトレビューソフト「Autodesk Navisworks」(同)
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