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三菱ガス化学、メタノール輸送船の配船計画を数理最適化技術で立案するシステムを稼働

DIGITAL X 編集部
2025年8月14日

三菱ガス化学は、メタノールを輸送する外航船の配船計画を立案するAI(人工知能)システムを開発し、2025年6月から運用を始めている。在庫や港湾の制約、契約条件、納期といった条件を加味した最適な計画を策定する。収益シミュレーション機能も持ち、配船を経営判断の指標にもする。システム開発を支援したグリッドが2025年7月28日に発表した。

 三菱ガス化学の「メタノール輸送外航船配船計画最適化システム」は、メタノールを輸送する外航船の配船計画を立案するAI(人工知能)システム。アジア・中東・カリブ海など複数の調達地域から、日本国内やアジア、EU(欧州連合)、北米地域への輸送に対し、数理最適化技術を使って複雑な制約条件を考慮した輸送計画を策定する。熟練者に依存してきた計画業務の効率を高めるとともに、配船の収益性を高めるのが目的だ。2025年6月に運用を開始した。

 配船計画最適化システムは、輸送に関する複数の制約条件を数理最適化技術を使ってモデル化する。条件には、船舶の運航状況や、メタノールを積み込む港と船から降ろす港の在庫量、各港湾の制約条件、契約内容、顧客が希望する納期、運航コストなどがある。これらの変動要素を踏まえ、AI技術で最も合理的な配船計画を策定する。

 配船計画の担当者は、帰宅前に諸条件を入力。システムが夜間に処理した結果を翌朝、確認し微調整する(図1)。日中は戦略立案や顧客対応などに注力する。これまでは、熟練の担当者が日中、手作業で数時間をかけて計画を策定していた。属人化が避けられず継続性に懸念があったとしている。

図1:三菱ガス化学が開発した「メタノール輸送外航船配船計画最適化システム」の導入効果

 今回、収益シミュレーション機能も開発した。配船内容の変更が輸送コストや利益に与える影響を算出する。この機能により、配船計画を単なる物流計画ではなく、収益を最大化するための経営レベルの判断材料に引き上げる方針である。

 システム開発には、サプライチェーン関連システムを手掛けるグリッドが協力した。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名三菱ガス化学
業種製造
地域東京都千代田区(本社)
課題メタノールを輸送する外航船の配船計画の作成は熟練者に依存し、属人化が進み持続性が懸念されるうえ、輸送計画の違いによる収益性の考慮が難しかった
解決の仕組み輸送に関する種々の制約条件を数理最適化技術を使ってモデル化し、計画を立案し最適な案を選択する。収益シミュレーション機能を開発し、配船計画の違いによる収益性を経営レベルで判断する
推進母体/体制三菱ガス化学、グリッド
活用しているデータ船舶の運航状況、積地・揚地の在庫、港湾制約、契約条件、顧客の希望納期、運行コストなど
採用している製品/サービス/技術数理最適化技術、AI技術
稼働時期2025年6月(運用開始時期)