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自動車部品の三桜工業、設計レビューとデータ分析用のAIエージェントを開発

DIGITAL X 編集部
2025年8月20日

自動車部品メーカーの三桜工業は、設計レビューとデータ分析の両業務に特化したAI(人工知能)エージェントを開発し利用を開始した。設計レビューでは、業務工数を削減し品質向上に充てられるようにする。データ分析では、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索補強型生成)基盤も開発しテキストや図表類も扱えるようにした。開発を支援したSpark+が2025年8月5日に発表した。

 三桜工業は、ブレーキチューブやフューエルチューブなどの自動車用配管部品を開発・製造する独立系メーカー。このほど、業務特化型のAI(人工知能)エージェントを開発し利用を開始した。

 開発したのは、(1)設計レビュー用と(2)データ分析用の2つのAIエージェント。前者では設計レビュー業務の効率を高めることで、製品の品質向上のための時間を創出する。後者では全社レベルでのデータ活用を推進し部門横断的な意思決定に利用する。

 設計レビュー用のAIエージェントは、同プロセスの「DRBFM(Design Review Based on Failure Mode:設計変更時に問題を未然に防ぐための手法)」に則って、過去の非構造化データを参照しながら設計上のリスクを抽出・提示する。設計者は、リスク検討や改善提案など、より付加価値が高い業務に注力できるようにする。PoC(Proof of Concept:概念実証)では、数十時間を要していたDRBFM作成の一部工程で、業務工数の約95%の削減を確認できたとする。

 データ分析用AIエージェントでは、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索補強型生成)基盤によりテキストや図表といった非構造化データも直接取得・検索する。これらのデータを統合してインサイト(洞察)を提示する。今後は、三桜工業が持つものづくりノウハウとデータを生かしながら、実務に即したAIモデルを構築する考えだ。

 AIエージェントの開発では、AI技術を開発るSpark+の支援を受けた。同社製の「マルチモーダルRAG基盤」を使い、データ統合と検索・生成処理を実行している。

 Spark+によれば、製造業がAI技術を導入する際は、現場が求める精度やデータ品質が障壁になることが多く、汎用型AIではなく業界特化型AIの必要性が高まっている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名三桜工業
業種製造
地域茨城県古河市(本社)
課題設計レビュー工程に時間と工数がかかり、設計者がリスク検討や改善提案などの付加価値業務に十分な時間を割けない。社内に構造化・非構造化データが分散しており部門横断での意思決定に活用できていない
解決の仕組み設計レビュー向け、全社向けデータ分析向けのそれぞれにAIエージェントを開発し、業務効率化と品質向上を両立するとともに、意思決定に必要なインサイトを提示する
推進母体/体制三桜工業、Spark+
活用しているデータ過去の設計関連文書、技術図面、表などの非構造化データ、Excelなどに保存された構造化データ
採用している製品/サービス/技術「マルチモーダルRAG基盤」(Spark+製)
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