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日産、車両を組み立てる作業員の動きをウェアラブルカメラ画像から可視化するAIシステムを導入

DIGITAL X 編集部
2025年8月26日

日産自動車は、完成車両の組み立て工程に、作業員が身に付けたウェアラブルカメラの映像から個々の動きを可視化するAI(人工知能)システムを導入した。車体の下や車内など固定式カメラでは撮影が難しかった画像を分析することで、個々の作業員の作業のバラツキや、熟練者と新人の動きの違いなどを把握し、作業動作の改善や新人教育などに利用する。AIシステムを開発したOlloが2025年8月5日に発表した。

 日産自動車が完成車両の組み立て工程に導入したのは、現場作業員の動きを映像から分析するAI(人工知能)システム。個々の作業員の動きのバラツキや、熟練者と新人の動きの違いなどを把握することで、作業上のボトルネックを改善したり、作業員の習熟度に応じた指導内容を導き出したりするのが目的だ。

 映像による動作分析は2024年秋から取り組んできた。このほど、作業員にウェアラブルカメラを装着してもらうことで、作業員が車体の下に潜り込んだり、車内に入り込んだりした際の動きも把握できるようにした(写真1)。これらの作業領域は固定カメラによる撮影では死角に入り、目視での観察や手作業の記録に頼らざるを得なかったという。

写真1:車台を組み立てる作業員の様子。潜り込むような動きでは作業分析に限界があった

 同社生産企画統括本部 モノづくり革新部長の林 哲也 氏は「今回のシステム導入は、特に組み立てラインのように手元の動きが従来検出しづらかった領域での課題解決につながる」とみる。

 ウェアラブルカメラの映像は、作業の1サイクルを見本として指定すれば、以後はサイクルごとに自動で分割する(図1)。さらにサイクル内の要素作業単位まで分割することにより、複数の作業サイクルを要素作業の単位で同期を取りながらの比較が可能になり、要素作業単位で差異の比較に基づく無駄な動作などの判別がようになったとしている。

図1:タイヤホイールの取り付け作業での1サイクルにおける要素作業の比較例

 熟練者と新人の動きの差異も比較できることから、同データに基づいた教育・訓練プログラムの策定にも取り組む。作業員の入れ替わりが多い工場では、人材の早期戦力化が求められるが「効率的な作業分析と短期間での技術の習熟が重要な課題だった」(林氏)という。今後はAI技術による分析精度を高め、作業に対する改善と習熟との両面から工場の競争力を高めたい考えだ。

 AIシステムには、製造現場向けシステムを手掛けるスタートアップのOlloが開発する画像認識ソフトウェア「Ollo Factory」を利用している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名日産自動車
業種製造
地域横浜市(本社)
課題組み立て工程における作業員の動作を把握したいが、固定カメラによる映像では車両の下や中など死角が多く、人手による分析に依存している
解決の仕組み作業員がウェアラブルカメラを身に付けることで、作業者目線の映像を撮影し、その画像を分析し、1つの作業サイクルを構成する要素単位での比較を可能にする
推進母体/体制日産自動車、Ollo
活用しているデータウェアラブルカメラで撮影した作業映像
採用している製品/サービス/技術画像認識ソフトウェア「Ollo Factory」(Ollo製)
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