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デンソー九州、車載用熱交換器の量産ラインにAI外観検査システムを導入
デンソー九州は、車載用熱交換器の量産ラインでの外観検査にAI(人工知能)技術システムを導入した。九州工業大学と共同開発したシステムで、熟練検査員並みの認識精度を持つという。検査業務の自動化と効率化を進め、歩留まり改善やライン立ち上げの迅速化につなげる。2025年8月27日に発表した。
デンソー九州は、エアコンユニットやエンジンクーリングモジュール、インタークーラーなど車載用熱交換器を製造している。このほど、量産用の新設ラインにおける外観検査にAI(人工知能)システムを導入した。熟練の検査員同様に微細な傷や材料混入を検出できる精度を持ち、検査業務の自動化と歩留まりの向上、ラインの立ち上げ期間の短縮などを図るのが目的だ。
量産ラインへの実装にあたっては、外観の撮像条件やタクトタイム(生産サイクルの時間)、歩留まり目標などに合わせて推論条件を変更できるようにすることで、撮像条件の違いや製品種別による調整を容易にした。新設ライン立ち上げ時のデータ収集・検証作業を短縮でき、早期に量産体制に移行できるとしている。
外観検査用AI技術は、九州工業大学 德永 旭将 研究室と共同で開発した。ディープラーニングを中核とした推論エンジンを持ち、熱交換器の良品・不良品の画像群を学習データに、画像上で不良の有無を「点」で指定すれば学習できるようにした。ラベリングによる学習では約500時間を要していた学習を約60時間で完了できたという。2021年から共同研究を始め、国内特許を出願済みである。
今後は、今回の実装を起点にシステムの発展を図る。主に(1)複数の製造ラインへの対応、(2)異常検知から予兆保全への応用、(3)次世代人材の育成・教育への活用、(4)他業種・地域企業との連携拡大の4つに取り組む。
複数の製造ラインへの対応に向けては、異なる製品や工程にも適用可能な汎用性の高いAIモデルを構築する。予兆保全への応用では、外観検査での異常検出データを分析し、異常が発生しやすい傾向を早期に察知することで、設備の保守や製造工程の改善に結びつける。
人材の育成・教育では、AI外観検査システムを教材に、学生が現場の課題解決を体験できるようにし実務に直結するAI人材を育成する。共同研究で得た知見やノウハウは九州域内の他業種や企業に展開してPoC(Proof of Concept:概念実証)を支援し、地域全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するという。
なお九州工業大学は、大学外の支援機関や人材を含めたPoC支援体制を整備しており、地域の企業がPoCを実施したい場合に迅速に対応できるとしている。
企業/組織名 | デンソー九州 |
業種 | 製造 |
地域 | 北九州市(本社) |
課題 | 車載用熱交換器の外観検査における人手依存を減らし、検査精度の安定と歩留まり向上を実現したい |
解決の仕組み | ディープラーニングを使って傷や材料混入を検出精度を熟練者並みに高めたAI外観検査システムを量産ラインに導入する |
推進母体/体制 | デンソー九州、九州工業大学 |
活用しているデータ | 車載用熱交換器の良品・不良品の画像データ |
採用している製品/サービス/技術 | AI画像解析技術(デンソー九州と九州工業大学が共同開発) |
稼働時期 | -- |