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オンデーズ、眼鏡フレームを生成AIで提案するバーチャル試着サービスを開発

森 英信(アンジー)
2025年9月29日

眼鏡メーカーのオンデーズ(OWNDAYS)は、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のためのモデル店舗を東京・天王洲アイルに2025年8月20日にオープンすると同時に、顧客の眼鏡選びを支援するためのバーチャル試着サービスを導入した。生成AI(人工知能)技術を使った眼鏡フレームの提案機能も持つ。CX(Customer Experience:顧客体験)の向上と効率的な店舗運営の両立を目指す。

 「顧客は自分にどんな眼鏡フレームが似合うかの判断が難しいと感じており、鏡を見て試着するだけでなく客観的な評価を知りたいと思っている。気に入ったフレームが2つあり、どちらが良いかを悩んでいるときの決断の助けになるような説得力のある情報を提供できる」--。オンデーズ(OWNDAYS)が開発したバーチャル試着サービス「OWNDAYS MIRROR」について、同社マーケティング部 広報・PR課 課長の重村 真実 氏は、こう説明する。

 オンデーズは、全世界13カ国・地域で約600店舗を展開する眼鏡メーカー。今回、店頭で眼鏡を試着するためのサービスOWNDAYS MIRRORを開発し、東京・天王洲アイルに2025年8月20日にオープンしたモデル店舗に導入した(写真1)。2026年3月末までに国内全店への導入を計画し、海外店舗にも順次展開する。店舗の規模が小さく大型モニターの設置が困難な場合はタブレット端末での代用も検討している。

写真1:天王洲アイル店には「OWNDAYS MIRROR」を2台設置した

 OWNDAYS MIRRORを使う顧客は、店頭に置かれたカメラ付きモニターの前に立てば、鏡を見るかのように眼鏡フレームを試着できる。メガネをかけたままでも試着でき、画面上では現在かけているメガネを消去され、選んだ眼鏡フレームがリアルタイムに合成表示される。視力が悪い顧客でも装着具合を確認できる。また、自分の姿に加え、眼鏡フレームを選ぶためのカタログが表示され、気に入った商品の在庫の有無も調べられる。

 併せて、顧客一人ひとりの顔立ちや雰囲気を生成AI(人工知能)技術を使って分析し、適切な眼鏡フレームを提案する機能も持たせた。希望する印象を「カジュアル」「フォーマル」「クール」「ソフト」など8つのカテゴリから選択すると、店頭にある商品から適切な眼鏡フレームを提案する。その際、提案した眼鏡フレームによって、どんな印象に見えるかをAI技術により「エレガントさ」「シャープさ」「やわらかさ」など具体的な言葉で説明もする(写真2)。

写真2:眼鏡フレームを掛けた際の見た目だけでなく、どんな印象に見えるかも解説する

 OWNDAYS MIRROR設置店舗では今後、店舗スタッフが少ない場合は一旦、OWNDAYS MIRRORでの試着を案内し、顧客の待ち時間を解消し、情報や接客不足による機会損失を防ぐといった運用を考えている。

技術ありきではなく顧客が受け入れられるDXを進める

 天王洲アイル店は、オンデーズ本社に近く、DX推進のテスト運用や新サービスの検証を継続的に実施するためのモデル店舗の位置付けだ。ここでのフィードバックを元に検討と改善を繰り返しながら、他店舗に展開していく。

 モデル店舗として今回、キャッシュレスセルフレジも導入した。伝票の2次元コードをかざせばタッチパネルで支払いが完了する。クレジットカードのほか各種キャッシュレス決済サービスに対応した。重村氏は「セルフレジはスーパーやコンビニなどでは一般化しているが、眼鏡業界では、まだ少ない顧客に受け入れてもらえる範囲のDXに留意しながら進めている」と話す。

 商品タグにはRFIDを埋め込み、店頭の在庫管理を簡略化した。商品は棚に置いたまま商品タグをスキャンすれば棚卸しが完了する。この情報がOWNDAYS MIRRORとも連携し、顧客も在庫の有無を確認できるわけだ。

 2020年2月から全店に展開している「遠隔視力測定」システムも導入している。店舗と本社のコントロールセンターを専用回線で結び、店頭に専門スタッフがいなくても熟練者が遠隔からカウンセリングする。視力測定には約10分がかかるが、その間を遠隔から対応することで、店舗スタッフは他の顧客対応に当たれる。重村氏は「遠隔システムだけの効果とは言い難いが、熟練者によるカウンセリングの満足度は高まっている。2022年度から調査しているNPS(顧客推奨度)は年々上がっている」という。

 オンデーズのDX推進について重村氏は「技術ありきではないし、私たちが『やりたい』と考えたことを、そのまま進めて良いわけでもない。OWNDAYS MIRRORが、元々接客に使ってきた鏡を対話型にできたように、自然に使ってもらえるものでなければならない」と強調する。

 OWNDAYS MIRROR開発の原点には「自分に似合うメガネが分からない」「選ぶ基準が分からない」「視力が悪くて試着時の印象が分からない」といった長年の顧客の声がある。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名オンデーズ
業種流通・小売り
地域東京都品川区(天王洲アイル店)
課題顧客が眼鏡を選ぶ際に抱いている悩みを解消すると同時に、店舗運営の効率化を図りたい
解決の仕組みバーチャル試着サービスを開発し、顧客のメガネ選びを支援する。RFIDタグによる在庫管理やセルフレジの導入、遠隔視力測定サービスを組み合わせて顧客満足度と接客効率とを高める
推進母体/体制オンデーズ
活用しているデータ顧客の顔画像・試着データ、商品タグを介したスキャンデータ、店舗の在庫データなど
採用している製品/サービス/技術試着サービス「OWNDAYS MIRROR」(オンデーズ製)、視力測定サービス「遠隔視力測定」(同)、RFID
稼働時期2025年8月20日(天王洲アイル店での運用開始時期)