• UseCase
  • 製造

NSK、軸受の再生・再利用を促進する仕組みの客先での検証を開始

DIGITAL X 編集部
2025年10月8日

自動車部品などを製造する日本精工(NSK)は、軸受の再生・再利用を促す仕組みの検証を、客先である製鉄会社で開始した。軸受の疲労度を外部から診断する技術や、再利用を前提とした設計、軸受のライフサイクル全体を対象にしたトレーサビリティデータを組み合わせて、顧客の設備保全コスト削減と環境負荷低減を両立できるビジネスモデルを確立するのが目的だ。2025年9月25日に発表した。

 自動車部品などを製造する日本精工(NSK)が検証しているのは、軸受の疲労度を非破壊で診断する独自技術を使って軸受けの再生・再利用を促す仕組み。顧客であるグローバルにビジネス展開する製鉄会社のメンテナンス現場で実施する。

 並行して、再利用を前提に設計した「再利用可能軸受」の品ぞろえの拡充と、軸受の製造から状態監視・診断、再生・再利用までを記録した「軸受トレーサビリティデータ」に基づく軸受の使用・メンテナンスの最適化の提案にも取り組んでいる。

 今後は、これらの診断技術や製品、データ活用を組み合わせ、軸受けのライフサイクル全体を対象にしたビジネスモデルの確立を目指す(図1)。具体的には、消耗品として軸受けを販売するのではなく、データによる状態監視と製品寿命を最大化できる保守を提案することで、顧客の設備保全コスト削減と環境負荷低減を両立できるサービスとして提供する。2026年からの事業展開を計画する。

図1:NSKが目指す「軸受トレーサビリティデータ」を利用する事業モデルのイメージ

 独自開発した非破壊疲労度診断技術は、稼働中の軸受の余寿命を簡単かつ正確に把握するためのもの。軸受の寿命を残さず最期まで使用できれば、メンテナンスコストや、製造時に多いCO2排出量の削減が可能になるとする。

 一般に軸受は、定期メンテナンスの一環として設備から取り外し、分解洗浄後に人手による外観調査に基づいて表面研磨など必要な補修をした後に設備に取り付けて再利用している。ただ余寿命を正確に把握できないため、設備の安定稼働を優先し一定時間稼働した軸受は廃棄しているほか、外観検査も熟練者の技量に依存しており、精度のバラツキや技能伝承が課題になっている。

 再利用可能な軸受は、製造段階から再利用を想定して設計することで、使用後も修復や再生によって寿命を引き延ばせる製品である。

 今後は、鉄鋼業界だけでなく、軸受が多用されている製紙や鉱山などの重工業分野や、鉄道、風力などの業界に向けても事業化を図りたい考え。NSKによれば、軸受は、製造時に多量のCO2を排出する部品の1つである。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名日本精工(NSK)
業種製造
地域東京都品川区(本社)
課題軸受を消耗品として売り切るのではなく、顧客の保全コスト削減や環境負荷低減といったニーズに合致する形で提供したい
解決の仕組み軸受の非破壊疲労度診断技術や再利用を前提に設計した製品、製造から再利用までを追跡したデータを組み合わせて、製品のライフサイクル全体を対象にするビジネスモデルを確立する
推進母体/体制日本精工
活用しているデータ軸受の使用履歴、診断結果、補修・再利用履歴などの「軸受トレーサビリティデータ」
採用している製品/サービス/技術非破壊疲労度診断技術(NSK製)、再利用を前提にした設計技術(同)
稼働時期--