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鉄道車両製造の日立レール、米国新工場は3000万ドル超を投資したスマートファクトリー

DIGITAL X 編集部
2025年10月7日

鉄道車両製造の日立レールは、米メリーランド州に新設した鉄道車両工場に、これまでに3000万ドル超のデジタル投資を実施し、スマートファクトリー化を図っている。工場内に物流基盤を構築し、さまざまなシステムや自律型ロボットとの連携により製造ラインの自動化やリアルタイムでのデータ活用を推進する。工場全体の効率を高め供給能力を強化するのが目的だ。日立製作所が2025年9月10日(米国時間)に発表した。

 日立レールが米メリーランド州ヘイガーズタウンで稼働させたのは、月間最大20両の生産能力を持つ最新工場。これまでに3000万ドル(43億5000万円、1ドル145円換算)超のデジタル投資を実施し、3D(3次元)データに基づく積層造形(アディティブマニュファクチャリング)技術を使うロボットや、AI(人工知能)技術を使った検査・予測保全など、種々のスマート化を推進している。製造ラインの自動化やリアルタイムなデータ活用などにより、北米市場における鉄道車両需要に対応できるだけの供給能力を確保するのが目的だ。

 そのために工場内の資材搬送と自動化設備を統合管理する工場内の物流基盤を構築している。資材搬送では、AGV(Automatic Guided Vehicle:自動搬送車)やコンベアー、エレベーター、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)機器などを管理し連携動作させる。

 AGVを管理するFMS(Fleet Management System:車両管理システム)とWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)を連携することで、AGVへの資材移動の指令やWMSへの入庫完了報告などを自動化する。

 自動化設備としては、PLC(Programable Logic Controller)やSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition:監視制御・データ収集)、ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)などの個別システムを統合する。

 統合する設備やシステムからは、資材や部品の搬送データ、設備の稼働データや検査結果などをリアルタイムに取得・分析する。システムの稼働状況を監視するほか、例外処理にも対応することで運用上の安全性と効率性を高める。

 これらの連携・連動を支える工場内の通信環境としては、プライベート5G(第5世代移動通信システム)ネットワークを導入し、工場全体をカバーする。5Gによる超低遅延・高帯域な通信により、ロボットのリアルタイム制御やデジタルツイン技術などの導入を進める。

 物流基盤は、日立子会社でソフトウェアエンジニアリングを手掛ける米GlobalLogicと、製造業向けシステム開発を手掛ける米Flexwareの戦略的デザイン部門であるMethodが共同開発した「LIFT3.0」を採用した。5Gネットワークの導入はスウェーデンの通信大手Ericssonが支援した。

 日立によると、米国の製造業では、ロボットや自動化技術の導入が進む一方で、各技術の連携不足が課題になっている。相互運用性のギャップから安全性や生産効率に制約が生じ、設備の性能を最大限に引き出せないという。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名日立レール
業種製造
地域米メリーランド州ヘイガーズタウン(新設の鉄道車両製造工場)
課題北米向け鉄道車両を安定して供給できるだけの製造能力を確保したい
解決の仕組み工場内の資材搬送と自動化設備を統合管理する物流基盤を構築し、ロボットや自動化設備の相互運用を可能にし、自動化を進めると同時に、各種データをリアルタイムに分析し、工場の安全性や運用性を高める
推進母体/体制日立レール、米GlobalLogic、米Flexwareの戦略的デザイン部門Method、スウェーデンのEricsson
活用しているデータ入庫資材要求、AGVへの指令、工場内物流関連システムの稼働状況、搬送・設備・検査データなど
採用している製品/サービス/技術物流基盤「LIFT3.0」(米GlobalLogicと米Flexwareの共同開発)、プライベート5Gネットワーク
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