• UseCase
  • 金融・保険

京葉銀行、コンタクトセンターでのオペレーターの回答精度を高める生成AI技術を検証

DIGITAL X 編集部
2025年11月4日

京葉銀行は、コンタクトセンター業務におけるオペレーターの回答精度を高めるための生成AI(人工知能)技術を検証した。回答に必要な顧客情報を引き出すための追加質問を生成し回答精度を高める仕組みで、検証では誤回答やハルシネーション(幻覚)リスクを低減しながら86%の回答精度を確認できたという。生成AI技術を提供した日立製作所が2025年10月21日に発表した。

 京葉銀行が検証したのは、コンタクトセンター業務におけるオペレーターの回答精度を高めるための生成AI(人工知能)技術(図1)。顧客の問い合わせ内容を理解し、回答するには情報が足りない際の追加質問を生成することで必要な情報を聞き出せるようにする仕組みを構築した。蓄積したナレッジを基盤にしたAI技術による自動応答により24時間365日の顧客対応を実現するのが目的だ。

図1:京葉銀行が実施したコンタクトセンターの回答精度を高める生成AI(人工知能)技術の検証概要

 検証は2025年5月から9月にかけて実施した。チャットで受け付けた顧客からの問い合わせに対し、オペレーターが回答するには情報不足だと思われる場合に、補足の確認質問を生成し顧客に提示する。例えば「手数料」に関する質問に対し「ATM(現金自動預払機)の手数料」なのか「振込手数料」なのかを質問する。オペレーターは、問い合わせの意図を明確にしながら対話を進め最終回答を用意する。

 検証システムでは、京葉銀行がWebサイト上で公開している情報を回答に利用し、適切な回答を提示できるかを評価した。結果、正答率が従来の58%から86%に向上した。これまでRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)技術で回答精度を高めようとしてきたが、RAGでのデータ学習だけでは十分な正答率が得られなかったという。

 今後は、検証した仕組みの実業務への適用を目指し、顧客の待ち時間短縮と対応品質の均質化によるサービス品質を高めたい考え。京葉銀行ではWebサイトに公開している情報に関しての問い合わせが相当数を占めており、そうした質問への回答精度の改善が、コンタクトセンター業務の改善や顧客満足度の向上に向けた課題になっている。

 追加質問の生成には、日立製作所の「ユーザー確認技術」を利用した。質問に含まれる情報が不十分な場合、確認質問を途中段階で提示して質問の意図をより的確に引き出せるという。

 日立によれば、金融機関では近年、非対面での問い合わせの増加やオペレーターの不足により、コンタクトセンター業務の効率化やオペレーターの負荷軽減が求められている。併せて、業務の属人化により回答品質にバラツキがある。

 ただチャットボットを利用するには大量のFAQ(よくある質問と答)を事前に作成する必要があるほか、複雑な言い回しへの対応が難しいという課題がある。そのためRAG技術を用いた回答精度向上が注目されているものの、質問者からの情報が不十分だと、誤回答やハルシネーションが発生する懸念がある。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名京葉銀行
業種金融・保険
地域千葉市(本店)
課題コンタクトセンターの受付を24時間365日体制にしたいが、RAG技術による学習だけでは十分な回答精度を得られず実業務に適用できない
解決の仕組み問い合わせ内容が不明確な場合に補足質問を生成する仕組みを導入し、質問の意図をより的確に把握したうえで回答できるようにする
推進母体/体制京葉銀行、日立製作所
活用しているデータ顧客の質問内容、京葉銀行Webサイト上の公開情報
採用している製品/サービス/技術不足情報を引き出す追加システムを生成する「ユーザー確認技術」(日立製作所製)
稼働時期2025年5月〜9月(検証の実施時期)