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サウジアラビアのサウジアラムコ、ガス製造プラントを複数のAIエージェントが連携し自律制御
サウジアラビアの国有石油会社であるサウジアラムコは、ガス製造プラントにおけるAGR(Acid Gas Removal:酸性ガス除去)ユニットの運転に複数のAI(人工知能)エージェントが連携する自律制御の仕組みを導入した。プラントをリアルタイムに制御し、エネルギー使用量を削減しながら運転効率を高める。制御用のAIアルゴリズムを提供した横河電機が2025年10月29日に発表した。
サウジアラビアの国営石油会社であるサウジアラムコ(Saudi Aramco)は、ガス製造プラントの「Fadhili Gas Plant(ファディリ・ガスプラント)」において、AGR(Acid Gas Removal:酸性ガス除去)ユニットの運転を複数のAI(人工知能)エージェントを使って自律制御する仕組みを導入した。エネルギーの消費量や化学物質の排出を抑えながら運転効率を最大化するのが目的だ。
自律制御では、複数のAIエージェントが協調しながらプラントの運転をリアルタイムに制御する。これまでの評価では、有機化合物であるアミンおよび蒸気の使用量を10~15%、電力の使用量を約5%削減できる効果を確認したとする。酸性ガス除去プロセスの安定性が高まり、オペレーターの手動操作を減らせたという。
AIエージェントの導入に当たっては、安全性を確保しながらモデルの学習を進めるために、プラント運転を模擬するシミュレーターを用意した。仮想環境でAIエージェントが導き出した制御モデルの信頼性と妥当性を検証した上で、実機の制御システムに組み込む。
自律制御の仕組みは、横河電機と奈良先端科学技術大学院大学が共同で開発した強化学習型AIアルゴリズム「FKDPP(Factorial Kernel Dynamic Policy Programming)」を基盤に開発した。経験したことがない状況でも一定の判断を下せるロバスト(頑健)性の高さが特徴という。
プラントのシミュレーターは横河電機が開発し、同社の統合生産制御システム「CENTUM VP(センタム・ブイピー)」と統合して実プラントに適用した。
サウジアラムコ エンジニアリング・サービスのシニア・バイス・プレジデントであるカリド・Y・アル・カタニ氏は、「横河電機との協業は、効率と持続可能性を高め、株主への価値を創出するための取り組みの1つだ。AIを含む先端技術の導入を通じて業績を高め、エネルギー分野の技術リーダーとしての地位を強化していることを示している」と話す。
| 企業/組織名 | サウジアラムコ |
| 業種 | 製造 |
| 地域 | サウジアラビア ジュバイル(Fadhili Gas Plant) |
| 課題 | ガス製造プラントにおける酸性ガスの除去工程でエネルギー使用量や有害物質の発生を抑え運転効率を高めたい |
| 解決の仕組み | 複数のAIエージェントを協調動作させ、運転をリアルタイムに制御する |
| 推進母体/体制 | サウジアラムコ、横河電機 |
| 活用しているデータ | ガス製造プラントの運転に関する情報 |
| 採用している製品/サービス/技術 | AIアルゴリズム「FKDPP」(横河電機と奈良先端科学技術大学院大学が共同開発)、統合生産制御システム「CENTUM VP」(横河電機製) |
| 稼働時期 | -- |
