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三井倉庫、港湾でのコンテナ配置などを計画するAIシステムを実証実験

DIGITAL X 編集部
2025年12月11日

三井倉庫は、港湾におけるコンテナ配置や荷役作業の計画を立案するAI(人工知能)システムの実証実験を2025年11月に開始した。作成した作業計画をシミュレーションし計画通りに荷役ができるかどうかを検証する。増え続ける貨物量や更新頻度の高い貨物情報に対応できる計画の立案を目指す。2025年12月2日に発表した。

 三井倉庫が実証するのは、港湾におけるコンテナ配置や荷役作業の計画を立案するためのAI(人工知能)システム(図1)。貨物量の増加やコンテナ貨物情報の更新頻度の高まりにより複雑になっている計画立案業務の効率を高めるのが目的だ。神戸六甲RC2コンテナターミナル(神戸市東灘区)で2025年11月から取り組んでいる。

図1:三井倉庫が実証するコンテナターミナルでの計画業務用AIシステムの概要

 計画立案システムではまず、港湾情報システム(TOS:Terminal Operation System)に保存された船卸・搬出・予約・在庫・通関などのデータを基に、コンテナの搬出日を過去の傾向から予測する。その予測を基に、コンテナの配置計画を作成すると共に、積み下ろしクレーンなどの重機の作業手順である荷役作業手順計画を立案する。

 荷役の計画では、出荷時期が早いと予測したコンテナを上段に配置するなど、効率的な積み付けを前提とした計画を組み立てる。一般的に、下の段にあるコンテナを取り出すには、上のコンテナを一度移動させる荷繰り作業が必要になる。

 作成した計画に基づき、荷役のシミュレーションも実施する(図2)。港湾と船舶や重機などを3D(3次元)モデル上に再現し、時間の経過と共にコンテナがどう動き、トラックがどう渋滞するかなどを検証する。

図2:計画に基づき船や重機などを3Dモデルとして再現し、荷役作業をシミュレーションする

 実証実験には、グループのエンジニアリング会社である三井E&Sと日立製作所が協力する。三井E&Sが荷役シミュレーターを開発し、日立は計画立案のためのAI技術周りを担当する。三井倉庫は港湾運営の知見を基に、データ条件や運用仕様の整理を担っている。国土交通省の港湾技術開発制度(令和5年度〜7年度)で受託した技術開発業務の一環である。

 三井倉庫によれば、コンテナターミナルの運営は、熟練の計画立案者による経験と知見が必要とされ、各貨物の搬出予定や特性が短いサイクルで更新されるようになり計画立案の複雑さが増している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名三井倉庫
業種物流
地域東京都中央区(本社)
課題急増する貨物量と頻繁に更新される貨物情報により、コンテナターミナル運営の計画立案が複雑になっている
解決の仕組みコンテナ搬出日を予測し、配置計画と荷役作業手順までを立案するAIシステムを開発する。計画はシミュレーションで事前検証する
推進母体/体制三井倉庫、三井E&S、日立製作所
活用しているデータ港湾情報システム(TOS)に蓄積されているコンテナ貨物の搬出・在庫・通関・予約情報など
採用している製品/サービス/技術計画立案のためのAI技術(日立製作所が提供)、荷役シミュレーター(三井E&Sが開発)
稼働時期2025年11月(実証開始時期)