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向島ドック、船舶修繕に特化したAIエージェントの利用に向け実績データ基盤の構築へ

ANDG CO., LTD.
2026年1月8日

向島ドックは、船舶の修繕業務に特化したAIエージェントの導入に向けたデータ基盤の構築に着手した。船舶が就航した後の運航記録や修繕・メンテナンスの実績データなどをまとめ、AIエージェントが利用しやすいデータ基盤として整備する。データの分析結果は、予防保全に利用するほか、船舶の開発・設計にもフィードバックし、運航が容易でメンテナンス負荷が小さい船づくりにも利用する。2025年12月22日に発表した。

 向島ドックが構築する「海事産業に特化したAI Agentプラットフォーム」は、船舶の修繕業務に特化したAIエージェントの導入に向けたデータ基盤(図1)。船舶の運航や修繕・メンテナンスの現場に蓄積されている各種の実績データをAI技術が利用しやすい形式でデジタル化し、造船の開発から設計、建造、運航、修繕・メンテナンスまでのライフサイクル全般における生涯価値を高めるのが目的だ。

図1:船舶の航行や修繕・メンテナンスの実績データを構造化しライフサイクル全般での船舶の価値向上に利用する

 データ基盤に統合するのは、運行情報や修繕・メンテナンスの実績値など。運行情報としては、運航事業者が持つ船上での電子機関日誌や船内整備記録簿、不具合記録、機関の温度や振動などのセンサーデータなどを想定する。修繕実績としては、船舶のどの部位が壊れやすいか、どのような処置を施せば長持ちするかといった測定・整備のデータや、船舶検査受験に関わる履歴などを含む。

 これらの情報を管理しているフリート管理システムと修繕計画システムを連携し、船舶の生涯データを集約する。非構造化データを含む種々の情報は、コンピュータビジョンやNLP(Natural Language Processing:自然言語処理)を使って、AI技術が利用しやすい構造化データに変換・整理する。これに修繕ドックでの工程で得られる実物データを組み合わせ、予知保全に向けたデータ解析などを可能にする。

 将来的には、海事情勢や新聞記事、最新の船級規則や安全基準など外部の情報も統合するほか、現場にロボティクス技術を導入し、精緻な現場データを定常的に取得する仕組みも構築する。

 構築したデータ基盤では、修繕業務に特化したAIエージェントを動作させる。予防保全のほか、造船所や船主に対し「メンテナンスコストが下がる仕様」や「機器のトラブルおよび船員の負荷が減る設計」を提案できるようにする。開発・設計工程にもフィードバックすることで、壊れにくく保守の負荷が小さい新造船の供給につながるとしている。

 船舶に関するデータは通常、造船所や機器メーカーは船舶の引き渡し前や自社製品に限られることが多く、運航に関する長期データは不足している。これに対し修繕ドックには、船舶の建造から廃船まで10年以上にわたる実績データが蓄積されている。ただ、情報の多くは、紙の記録や手書きの数値、熟練工の勘と経験、日々の会話など非構造データとして散在していた。

 データ基盤により船舶のライフサイクル全体をデータでつなぐことで、船員や船主、造船所や機器メーカー、そして修繕事業者までは同期・連携する環境を整備したい考えだ。

 向島ドックは、修繕専業ドックでありながら、自社で4隻を保有し、自社社員が運航するなどフリート(運航)事業も展開している。修繕と運航の両視点から船舶データを保有・利用していることがデジタル時代の強みになると判断した。

 データ基盤の構築は、海事産業向けシステム開発を手掛ける東大発のスタートアップNoahlogy(ノアロジー)と共同で取り組む。Noahlogyは、現場へのヒアリングやAIモデルの構築、運用・定着までを支援し、現場の技術者自らがデータを活用しながらて業務を改善できるように人材育成・組織づくりを後押しするとしている。

 向島ドックによれば、国内貨物の輸送する内航海運は、船員や技術者の高齢化が進む一方で、働き方改革への対応により、従来通りの輸送能力の維持が困難になっている。船舶自体の老朽化も進行しており、生産性を抜本的に高めることが急務になっている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名向島ドック
業種物流
地域広島県尾道市(本社)
課題内航海運における輸送能力維持が難しくなっていると同時に船舶の老朽化が進んでいる
解決の仕組み運航と修繕・メンテナンスに関わる各種の実績データや技術者などの知見をAI技術で利用しやすい形で一元管理し、船舶のライフサイクル全体でデータを活用できるようにする
推進母体/体制向島ドック、Noahlogy
活用しているデータ船舶の運航データ、建造から廃船までの修繕・メンテナンスの実績データ、紙の記録や手書きの数値、熟練工の勘と経験、日々の会話など非構造データ、海事情勢や新聞記事、船級規則や安全基準などの外部情報、ロボティクス技術で取得する精緻な現場データ
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