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キリン、ビールの“おいしさ”を成分レベルで可視化するAI技術を開発
キリンホールディングスは、ビールの“おいしさ”を成分レベルで可視化するためのAI(人工知能)技術を開発した。2026年3月以降に発売するビール類の商品開発から利用する。香味の設計を経験則に頼る方法から消費者理解に基づくプロセスに転換し、製品開発の精度と速度を高めるのが目的だ。消費者の選択や行動につなげるための研究にも着手した。2025年12月17日に発表した。
キリンホールディングスが開発した「FJWLA(Flavor Judgment for Whole Liking Analysis:フジワラ)」は“おいしさ(嗜好度)”に影響する成分を導き出すためのAI(人工知能)技術(図1)。飲料開発の精度と速度を高める取り組みである「嗜好プラットフォーム」の中核技術の位置付けで、商品開発初期の香味設計を消費者理解に基づくプロセスに転換する。2026年3月以降に発売するビール類から実導入する。
FJWLAでは、おいしさを構成する要素として、飲料に含まれる成分と、人間が感じる苦みやのどごし、キレといった味覚、嗜好度の相関関係を解析し、どの成分が、おいしさに最も寄与するかを算出する。
商品開発者は、解析結果を基においしさに寄与する成分を技術的にコントロールしながら飲料を試作する。試作品は消費者に試飲してもらい、他製品と比較しながら、おいしさを調査する。得られた評価コメントなどを新たなデータとして統合し、FJWLAの分析の精度を高めていく。
FJWLAを使って消費者の選択や行動につなげるための研究も日立製作所と共同で開始した。(1)飲料選択要因と(2)飲酒行動要因の2つの解析に取り組む。
飲料選択要因の解析では、飲料そのものの特性と、消費者の評価や行動といった異なる性質の情報をAI技術で統合し、飲料が選ばれる理由を構造的に整理する。飲料開発の初期段階から価値提案の精度を高められるようにする。
飲酒行動要因の解析では、アルコール飲料の摂取に対し、健康や安全に配慮した飲酒行動に関する消費者の認知や感情、環境要因が、どのように影響するのかを探る。行動科学やデザイン思考を取り入れ、消費者が望む行動を前提とした商品や情報提供のあり方を検討し、社会全体の健康増進に貢献する企業価値の創出につなたい考えだ。
今後はFJWLAの適用領域を、缶酎ハイなどのRTD(Ready To Drink)やワイン、清涼飲料にも段階的に拡張するとともに、研究開発から商品開発、市場投入後の改善までのサイクルを高速化する仕組みの実現を目指す。
飲料のおいしさを決める香味の設計はこれまで、醸造家や中味開発者の経験に依存してきた。データ分析の使用は限定的で、開発初期から「どのように選ばれる商品にするか」や「どのような消費者を想定するか」の具体化は難しかった。ノンアルコール飲料の拡大などを背景に、健康や安全を含めた飲酒行動そのものへの視線も強くなっている。
FJWLAを使った今後の研究では、日立製作所が保有するマルチモーダルAI技術や行動科学の知見を活用し、数値データに加え、アンケート調査結果など非構造化データも取り込んでいく。
| 企業/組織名 | キリンホールディングス |
| 業種 | 製造 |
| 地域 | 東京都中野区(本社) |
| 課題 | 消費者ニーズが多様化しノンアルコール飲料の消費も拡大する中で、開発の初期段階から選ばれる商品像や消費者像を具体化したい |
| 解決の仕組み | “おいしさ”を成分レベルで可視化できるよう、消費者の嗜好データと飲料成分、感性評価を統合解析するAI技術を開発し、開発者の経験だけに頼らずに狙った味を再現できる試作・評価サイクルを構築する |
| 推進母体/体制 | キリンホールディングス、日立製作所 |
| 活用しているデータ | 飲料成分データ、消費者の嗜好度・味覚評価、飲酒行動に関わる認知・感情・環境要因データ |
| 採用している製品/サービス/技術 | マルチモーダルAI技術(日立製作所が提供) |
| 稼働時期 | 2025年12月(FJWLAの運用開始日) |
