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堀場製作所、燃料電池触媒の混合分散条件を自律探索するAIシステムの開発を開始
計測機器の製造・販売を手掛ける堀場製作所は、燃料電池の性能を左右する触媒層製造の混合分散プロセスにおいて、最適条件を自律的に探索するAI(人工知能)システムの開発を開始した。実験・評価・条件更新を繰り返すプロセスを自動化し、検証サイクルを高速化する。2026年3月15日に発表した。
計測機器の製造・販売を手掛ける堀場製作所が開発を開始した「混合分散ROPES(Robotic Objective Process Exploration System)」は、燃料電池の触媒層製造における混合分散プロセスを対象に、最適条件を自律的に探索するためのAI(人工知能)システム(図1)。少ない試行回数でも最適条件へと収束させることで、検証サイクルを速めるのが目的だ。
混合分散は、材料となる触媒粒子や溶媒などを混合した触媒インクを混ぜたり、分散させたりする工程。その配合比率や混ぜ方によって粒子の状態や凝集の程度が変わり、最終的な燃料電池の性能に直結する。
混合分散ROPESでは、条件設定・試作・計測の一連をAI技術が自律的に実行する。設定した条件に基づいてサンプルを作成し、粒子径分布測定装置などで計測した結果をデータとして取得する。粒子の大きさのバラツキである粒子径分布などから分散状態を評価し、その結果を基に混合条件を更新して次の試行へとフィードバックする。
今後は、材料選択から混合分散、塗布・乾燥、性能・構造評価までを含む一連のプロセス全体を最適化するシステムの構築に取り組む。
その一環として、塗布・乾燥の工程を対象に2025年3月に開発した「塗布乾燥ROPES」を連携させる。塗布乾燥ROPESは、温度や時間、塗布条件といったパラメーターを制御しながら、AI技術が最適な条件を探索するシステム。人手による試行錯誤と比べて、探索効率を100倍以上に高められたという。
混合分散ROPESの開発は、東京大学がシステム構想とプロセス技術の設計を担い、金沢大学が混合分散メカニズムの解明を担当する。堀場製作所は、自社の分析・計測機器とソフトウェアを統合するインテグレーション技術を生かし、システム全体の開発を主導する。
開発プロジェクトは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する委託事業「水素利用拡大に向けた共通基盤強化のための研究開発事業」の一環。
堀場製作所によると、触媒層製造の条件探索では従来、大型の生産ラインを用いて研究者や技術者が試行錯誤を重ねてきた。試作と評価を繰り返す方法は時間とコストを要し、大量の材料消費も課題となっていた。
| 企業/組織名 | 堀場製作所 |
| 業種 | 製造 |
| 地域 | 京都市(本社) |
| 課題 | 燃料電池の触媒層の混合分散プロセスでは、最適条件の探索を人手による試行錯誤に依存し、試作と評価の反復に時間とコストを要するほか、材料消費をともなっていた |
| 解決の仕組み | 条件設定、試作、計測、評価、条件更新の一連のプロセスを自律的に実行するAIシステムを構築する。計測データを基に混合分散状態を定量評価しながら最適条件へ収束させることで、少ない試行回数で効率的に条件探索を進める |
| 推進母体 | 堀場製作所、東京大学、金沢大学 |
| 活用しているデータ | 触媒インクの混合分散状態を示す粒子径分布(粒子の大きさのバラツキ)データなどの分析・計測データ |
| 稼働時期 | -- |
