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三菱電機、「2030年度までに2万人」のDX人材育成に向けた学習拠点を横浜に開設

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2026年4月27日

三菱電機はDX(デジタルトランスフォーメーション)人材を2030年度までに2万人育成する。自律的な学びを促すための人材育成拠点を2025年3月5日、横浜に開設した。事業課題に直結するプロジェクト型学習を通じてマインドセットを変革し、組織の壁を越えた共創文化の醸成を狙う。同日に発表した。

 三菱電機は「イノベーティブカンパニー」への変革に向けた人的資本経営の重要投資領域に人材育成を位置付けている。「DX(デジタルトランスフォーメーション)人材を2030年度までに2万人を確保する」ことをKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)に設定する。

 足元の進捗を常務執行役 CHRO(最高人事責任者)の阿部 恵成 氏は「これまでに約6500人を育成してきた。今後は社内でのリスキリング対象者を年間1000人から3000人規模へと引き上げ、目標達成に向けた基盤を固めていく」と意気込む(写真1)。

写真1:三菱電機 常務執行役 CHRO(最高人事責任者)の阿部 恵成 氏

DX人材育成拠点を軸に全社横断の人材ネットワークを構築

 その一環として、実践的な学びを促進するための人材育成拠点「横浜イノベーションスタジオ」を2026年3月5日に開設した(写真2)。2025年4月に立ち上げたグループ内の人材育成機関「DXイノベーションアカデミー」の活動施設の位置付けで、5つの研修室と、利用者が自由に交流できるオープンエリアを持つ。

写真2:DX人材育成のための共創施設「横浜イノベーションスタジオ」は5つの研修室とオープンエリアを備える(提供:三菱電機)

 横浜イノベーションスタジオについて人財開発センター センター長の西川 孝典 氏は「全国各地の製作所(同社の開発・製造拠点)から人が集まり、横断ネットワークを形成するための物理的な拠点」だと説明する(写真3)。

写真3:三菱電機 人財開発センター センター長の西川 孝典 氏

 そこでは人材開発と事業の連携を図るために、実務に直結するプロジェクト型学習手法であるPBL(Project Based Learning)を推進する。スタジオの上階にある共創空間「Serendie Street Yokohama(セレンディストリート横浜)」も使いながら、実際の事業課題をテーマにした講座などを実施する。ライブ配信により各地の製作所を結んだハイブリッド型の学習も提供する。

 学習プログラムは産学連携により作成する。「『脱・自前主義』の教育環境を目指し外部の知見を取り込みたいためだ」(西川氏)。既に早稲田大学データ科学センターと2025年3月に協定を締結した。データサイエンスを扱う高度なカリキュラムや講演会などを共同で展開する。

 その背景には「ハードウェアを磨き続けてきた成功体験が、DXへの抵抗感を生む要因になりかねないという危機感がある」(西川氏)。イノベーティブカンパニーへの変革に向けては「従業員1人ひとりが自ら学び、挑戦するためのマインドセットを構築しなければならない」(同)と強調する。

 阿部氏も意識改革の重要性について「トップ層のコミットはあるものの、現場での運用定着とコミュニケーション強化が必要だ。自ら学びの機会を求めて手を挙げる部下を、マネジャーがいかにサポートできるかが問われている」とする。

自律的な学びを支援するAIシステムも開発

 DX人材の育成においては、業務に直結する専門性を7つのカテゴリーに分類し、それぞれに初級から上級までの4段階の認定レベルを設けている。「エンジニアだけでなく、デジタル技術に触れる機会が少なかった営業部門や企画部門の従業員も、段階的に必要なスキルを身に付けられるようにするため」(西川氏)だ。社内の認定制度(メダル)を設け「モチベーションとスキルの見える化を両立させる」(同)仕組みも導入した。

 2022年からは学習基盤「メルカレッジ」を運営し、社内の専門家が講師になって知見を共有する『誰でもセミナー』などを実施している。これまでに「延べ4万2000人が参加したコミュニティに成長している」と西川氏は話す。

 従業員の学習をサポートするためのAI(人工知能)技術の活用にも取り組んでいる。AIチャットボットの「Mナビ」が、その1つ。450ある講座を技術分野と習得順序で可視化し、職種や技能に応じて最適な講座をリコメンドすることで「より効果的な学習パスを提示する」(西川氏)

 次世代リーダーの育成に向けては、主に新規事業の提案を支援する「AI対話システム」を開発した。AIシステムとの“壁打ち”により「批判的な思考と、現状分析から課題の特定、解決策の立案といった段階的な思考を養い、研修での提案を実際の実案件につなげていく」(西川氏)のが目的だ。そのため「あえて即答せず、課題設定の妥当性や視点の抜けを問いかけるよう、当社の経営・事業戦略知見を反映したコンサルタント像にチューニングしている」(同)という。

 「2030年度までに2万人」という目標達成に向けて阿部氏は「会社としてもマインドセットの変革をさらに高めていく必要がある」とする。そのうえで今後は、グローバルな視点での人材確保や、M&A(Mergers and Acquisitions:企業の合併・買収)による外部リソースの取り込みも視野に入れる。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名三菱電機
業種製造
地域横浜市(横浜イノベーションスタジオ)
課題長年の成功体験に基づく「ハードウェア至上主義」がDX推進への抵抗感を生んでおり、製作所ごとの縦割り組織や自前主義が、サービス創出や外部知見の導入を阻んでいる。事業変革を担う人材開発においては従業員が自発的に学び挑戦する土壌が求められる
解決の仕組みDX人材育成のための共創空間を拠点に、事業課題と学びを連動させるプロジェクト型学習を推進する。AIチャットボットによる個別最適な学習パスの提示や、新規事業の立案を支援するAIシステムによる事業創出に直結する思考法などを養い、実業にデジタル技術を適用できる人材を2030年度までに2万人育成する
推進母体/体制三菱電機
活用しているデータ7カテゴリー・4レベルの従業員のスキル情報とその認定状況、社内450講座の学習履歴など
採用している製品/サービス/技術学習基盤「メルカレッジ」、AIチャットボット「Mナビ」、思考支援型AIシステム
稼働時期2026年3月5日(横浜イノベーションスタジオの開設時期)