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ハナマルキ、「自走する組織」を原動力に“塩こうじ”を企業成長の柱へ

「Manufacturing Japan Summit 2026」より、取締役 平田 伸行 氏

齋藤 公二
2026年4月23日

創業108年のハナマルキは、液体塩こうじという新規事業を新たな柱へと育成する中で、組織のあり方そのものを変革してきた。同社 取締役 平田 伸行 氏が「Manufacturing Japan Summit 2026」(主催:マーカス・エバンズ・イベント・ジャパン、2026年2月4日)に登壇し、「塩こうじ推進会議」の設置、露出を最大化する宣伝・PRの実践、人材採用と評価制度の改革といった施策を通じて、社員が自ら考え、動く「自走する組織」をどのように実現してきたのかを語った。

 「当社は、みそ、即席みそ汁の事業に加え、塩こうじという日本古来の調味料の拡販にチャレンジしている。塩こうじ事業に必死に取り組む中で『自分で考え、動く力』が徐々に育ってきた。現在は『自走する組織』を仕組みとして定着させるステップに入っている」--。ハナマルキ 取締役 平田 伸行 氏はこう話す(写真1)。

写真1:ハナマルキ 取締役 平田 伸行 氏

 平田氏は、2013年にハナマルキに入社後広報宣伝室長に、2018年に取締役に就任した。現在は、マーケティング部門に加えて人事総務部門も統括し、企業文化や働き方の改革、人材採用・育成などの組織改革を推進している。

 同社の成長を象徴するのが液体塩こうじだ。市場を振り返ると「塩こうじは2011年頃にブームが到来した」(平田氏)という。原料がみそと共通することから当時、みそメーカーがこぞって参入した。ハナマルキは2012年4月に粒タイプを発売したが「液体タイプがあったら使いやすい」という声に応えて2012年10月に液体塩こうじを発売した。

 だが、その後ブームは終わり、社内外からは販売を続けることに否定的な意見があった。しかし平田氏は、新商品を単なる流行で終わらせるのではなく、みそ、即席みそ汁に続く「第3の柱」に育て上げるチャンスだと捉えていた。

 その期待を叶えるのが“液体化”の実現だった。塩こうじは塩味、うま味、甘味を持つ調味料でありながら、肉や魚を柔らかくしたり、素材をジューシーにしたり、臭みを押さえたりといった種々の機能性を持つ。

 粒状タイプは「焦げ付きやすかったり、汎用性に欠けたりするなどの課題があった」(平田氏)が、それを克服したのが液体化でもあった。液体塩こうじは製造特許を取得。日本のみならず、米国、中国などでも取得している。

 製造特許の取得は追い風となり、社内での検証を通じて「今までにない基礎調味料になる」との確信を得る。液体塩こうじの可能性に魅力を感じて入社した平田氏は「もしこの商品が売れなければ、それは宣伝・PRを担当する自分自身の責任になると思っていた」と強調する。

「塩こうじ推進会議」の設置と店頭試食で社員を自ら動かす

 平田氏のミッションは、製造特許を持つ液体塩こうじの強みを生かし、新たな事業の柱に引き上げることだった。ただ「当初の社内は盛り上がりに欠ける状況だった」と平田氏は振り返る。世間ではすでにブームが終焉し、期待感が冷え込んでいたことに加え「社内では新規事業を立ち上げた経験が少なく、戸惑いがあった」(同)からだ。

 顧客の元に提案に行けば「『なぜブームが終わったものを持ってくるのか』『トレンドに疎いのではないか』との言葉をもらうこともあった」(平田氏)という。社内の会議でも「伝統の『みそ』については生き生きと語る社員たちが、液体塩こうじが話題になった途端に口を閉ざしてしまう状況」(同)だった。

 そんな状況を支えたのは「経営トップが塩こうじに集中することを明言した」(平田氏)ことだった。さらには「『みそのPRは一切やらなくていい』というブレない方針を打ち出したことは大きな救いになった」(同)という。あまりの集中ぶりに「社内からは『もっと、みそ商品を宣伝してほしい』と懇願されたことも多々あった」(同)ほどだ。

 新事業を育てていくために平田氏が力を入れたのは「人を変えるのではなく、人が変わる環境をつくること」だ。具体的には(1)社内の関心を高める、(2)宣伝・PRでの仕掛け、(3)人材採用の3つを主なテーマとして施策を実行した。

 社内の関心を高めるために、会議体として「塩こうじ推進会議」を設置した。この場においては「『みその話はNG」』というルールを設けている」(平田氏)という。部署横断で構成したメンバーに加えて「会長・社長も必ず出席する。これまで10年以上、月1回継続して開催している」(同)

 新事業である塩こうじには正解はない。だからこそ会議では「『正解を探す必要はない』『必ず発言する』ことをルール」(平田氏)にした。席は固定せずにくじ引きで決め「誰もが立場にとらわれずに、事業を主語として意見を出せる環境にした」(同)という。

 会議での議論から生まれた取り組みの1つに、店頭試食販売の強化がある。実際に、全社員が店頭販売を経験し、現場で消費者の生の声に触れた結果「社員の意識に変化が見られるようになった」と平田氏は強調する。「会議の中では具体的な発言が増え、指示を待つのではなく自ら動けるようになってきた」(同)