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JR東日本、輸送安全に向けてレールのゆがみを予兆検知する機能を保全システムに追加

DIGITAL X 編集部
2026年5月15日

JR東日本(東日本旅客鉄道)は、保線技術者向けの保全システムに、レールのゆがみを予兆を検知する機能を開発・実装した。夏季の高温による張り出し現象を早期に把握するCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)へと移行し、輸送安全の向上につなげる。2026年4月8日に発表した。

 JR東日本(東日本旅客鉄道)は、線路状態を示す軌道変位データを分析・可視化し、保線技術者の点検や保全を支援するシステム「Viz-Rail」を開発している。Viz-Railにこのほど、レールのゆがみを予兆検知する機能「HARIBO(ハリボウ:張防)」を開発・追加した。設備故障を未然に防ぐCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)へと移行し、安全レベルの高い輸送サービスにつなげるのが目的だ。

 鉄道レールは夏季の高温時、膨張により外側に押し出されようと大きくゆがむ張り出し現象がまれに発生する。HARIBOでは、営業車両からデータを取得する「線路設備モニタリング装置」を導入済みの線区全線を対象に、直近300日分のゆがみデータを毎日分析する。保線技術者はダッシュボードを参照しながらレールの状態を確認し、現地調査の優先順位を判断する。

 具体的には、レールに付与された列番号や、起点からの距離を示すキロ程ごとにゆがみの最大・最小幅を表示して、変動幅が一定値を超えた地点を地図上で特定できるようにする。場所ごとの変動幅は中央値と比較して、張り出しの予兆として捉える(図1)

図1:「HARIBOU」で線路の距離ごとに300日間のゆがみの中央値と変動幅を示したグラフの例

 時系列分析では、計測地点の300日間の変化もグラフにする。従来は、検測車「East-i」で年4回取得するデータに加え、線路構造や過去事例などを基に点検箇所を抽出しており、急な変動を捉えにくかった。その上で、高温時に保線技術者が現地で目視確認していた。

図2:日常的にモニタリング装置からデータを得ることで、時系列によるゆがみ変化の分析精度を高める

 計測のための線路設備モニタリング装置は、レールを固定するボルトや枕木などの状態を画像として記録・解析する「材料モニタリング装置」と、レールのゆがみを計測する「軌道変位モニタリング装置」で構成される(写真1)。

写真1:「線路設備モニタリング装置」では営業車両の床下に設置した装置から材料やゆがみのデータを取得する

 同社は今後、Viz-Railを線路設備全般の状態判定基盤として拡張する計画である。さらに、AI(人工知能)技術などを用いて、状態判定結果を基に工事計画調整からヒト・モノ・カネのリソース配分までを最適に実行する管理方法の構築を目指す。

 将来的には、開発で培ったノウハウを他の鉄道事業者へ展開し、鉄道業界全体の線路メンテナンス高度化につなげることも視野に入れている。

 JR東日本は、2018年から線路設備モニタリング装置を導入し、軌道変位データを取得する体制を整備してきた。それを受け、2023年から社内開発チーム「DICe(Digital & Data イノベーションセンター)」と現場の保線技術者が連携してViz-Railの開発を進めてきた。

 Viz-Railにはこれまで、直近15日間の軌道変位データから急激な変化箇所を検知する機能や、線路の凹凸量データから列車動揺を予測する機能を開発してきた。今回追加したHARIBOUは第3弾の機能に当たる。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名東日本旅客鉄道(JR東日本)
業種交通
地域東京都渋谷区(本社)
課題保線業務が定期点検に依存しており、レールのゆがみを未然に防止する仕組みをつくりたい
解決の仕組み営業車両に搭載したモニタリング装置で軌道変位データを毎日収集し、レールのゆがみの変動幅から異常予兆する機能を開発して線路保全システムに実装する。ゆがみの発生地点や変化の推移を可視化し、現地調査の優先順位付けに利用してCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)へと移行する
推進母体/体制JR東日本
活用しているデータ線路設備モニタリング装置で取得する軌道変位データ
採用している製品/サービス/技術線路保全システム「Viz-Rail」(JR東日本製)、線路設備モニタリング装置
稼働時期--