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JCB、加盟店対応デスクにAIエージェントを導入し現場主導で応対精度を最適化
「Voice to Value 2026 夏」より、コミュニケーション推進部の岡田 和永 氏とシステム本部の福山 武彦 氏&寺澤 洋介 氏
現場主導の改善サイクルにより本番での精度低下を克服
ポイント2:成果をどう測り、現場でどう運用するか
AIエージェントは、全呼量のうち約15%を占める札幌と福岡の2拠点を対象に、2026年2月に初期リリースした。そのPoCでは「音声認識による振り分け率(AI振り分け率)は90%を超えていたが、初期リリース時には60%台にまで落ちることになった」と岡田氏は当時を振り返る。そのため、ポイント2は「リリース後に重要性を増した領域」(同)だ。
PoCより精度が落ちたのは「架電テストを担当していたオペレーターは顧客対応に慣れ、発声が明瞭であるため、認識率も高く出てしまう傾向があった」(岡田氏)ためだ。
そこで初期リリース後、オペレーターには「『顧客の真似をして話してほしい』や『方言を使ってわざとなまらせてほしい』などと依頼し、種々のテストによるモニタリングに取り組んだ。さらに、実際の顧客の発話に対するAI認識の状態もモニタリングした。その件数は「1日約200件、合計約4000件に及んだ」(岡田氏)という。
2026年5月には東京と大阪の拠点を含めた全国展開を完了したが、モニタリングとチューニング作業は継続している。
その狙いを岡田氏は「ベンダーにチューニングを依存せず、現場のメンバーが自ら気づいて修正し、その結果を実際に検証するというサイクルを作ること」だと説明する。業務に適した応対が実現し「最終的な振り分け率を向上させる仕組みを確立できた」(同)とする。反復の過程では「FAQを作成する際に、AI技術の動作を踏まえたガイダンスを整備する必要性に気付くなど、加盟店デスク業務全体の改善につながった」(同)
全国展開の時点で「AI振り分け率は78%にまで達した」(福山氏)という。業務面でのKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)には「AI業務代替率」を設定していたが「初期リリース時に38%だったAI業務代替率は、全国展開時には48%にまで向上した」(同)
安全運用のために「生成AIに何をさせないか」を定義
ポイント3:セキュリティの合意をどう取るか
AIという新しい技術に対し、コンプライアンスやセキュリティの基準をどうクリアしていくかという課題である。
JCBでは既に、AIチャットボットなどを利用するための「AI利用ガイドライン」が存在していたが、ジェーシービー システム本部 システム企画部の寺澤 洋介 氏はこれを「AIエージェント向けの新たなガイドラインとして作り直した」と説明する。
その方針を寺澤氏は「ビジネス部門が推進したい施策に対して、いかに安全に運用するかという“ブレーキ”の役割が必要になる」と説明する。そこでは「『何でも実行できる生成AI技術に、何をさせないか』を明確にして進めていく」(同)
そのための合意形成では「まず構造を論点化し、何がリスクかを厳密に定義することに努めた」(寺澤氏)という。具体的には、カード情報を扱うか否かを軸に据え、業務設計によってリスクを回避できる領域の特定などを進めた。協力したIVRyは、個人情報のマスキング機能の実装や、アクセスに対するIPアドレス制御などの技術的な対策も支援した。
コンプライアンスやセキュリティを確保するポイントとして、寺澤氏は「初期段階から正式なプロセスとして承認を得る」ことを挙げる。新たなセキュリティ課題などに直面した際にも「次の段階での承認を取得しやすくなる」(同)ためだ。
VoC(顧客の声)連携で他業務への展開を目指す
今後の方針では、AI振り分け率やAI業務代替率をさらに向上させ「他のデスク業務への転用を図っていく」福山氏。その際には、どうデータを連携させるかなども課題になる。
現在、コンタクトセンターでの音声データなど、顧客のVoC(Voice of Customer:顧客の声)は別システムで管理している。福山氏は「VoCをどう分類し、分析可能な状態にして生成AI技術やAIエージェントで活用していくかは、今後の検討課題」(同)とする(図2)。
講演の最後に福山氏は「カード会社の個人情報は、その保存場所の確保やマスキング処理など、AI活用のためにクリアすべき課題は多い。さまざまな企業と協力しながら、取り組みを加速させていきたい」と力を込める。
