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JCB、加盟店対応デスクにAIエージェントを導入し現場主導で応対精度を最適化
「Voice to Value 2026 夏」より、コミュニケーション推進部の岡田 和永 氏とシステム本部の福山 武彦 氏&寺澤 洋介 氏
生成AI(人工知能)技術のPoC(Proof of Concept:概念実証)を突破し、実業務で定着を図るのは簡単ではない。クレジットカード大手のJCB(ジェーシービー)は加盟店デスクへAIエージェントを導入し、月間1万件の問い合わせに対して月間約500時間の業務削減を実現している。同社のプロジェクト担当者3名が「Voice to Value 2026 夏」(主催:IVRy、2026年6月25日)のパネルディスカッションに登壇し、本番運用後の精度低下を克服したモニタリングの取り組みや個人情報を守るセキュリティ要件への対応などを明かした。
「数年後にコンタクトセンターシステムの大規模な刷新を控える中で、それまでの期間にAI(人工知能)コンタクトセンターに関する取り組みを停滞させるわけにはいかない。小さく、早く、AIの取り組みを進める必要があった」--。JCB(ジェーシービー) システム本部の福山 武彦 氏はこう話す(写真1)。
JCBは、1961年に日本初となる汎用型クレジットカードをスタートし、現在までに国内唯一の国際カードブランドを運営する。2026年3月末時点で、加盟店数は国内外を合わせて約7200万店、会員数は1億8192万会員に及ぶ。
同社はこのほど「加盟店対応デスク」と呼ばれるコンタクトセンター業務にAI(人工知能)エージェントを導入した。コミュニケーション推進部ミドルGの岡田 和永 氏によれば「現在、約43%の業務をAI技術によって代替・完結し、月間約500時間、約2.8人分の業務時間を創出するといった成果を挙げている」という。
加盟店対応デスクは、飲食店や小売店、EC(電子商取引)サイトなど、JCBカードで支払いができる店舗や事業者(加盟店)に向けた問い合わせ窓口である。例えば顧客がJCBカードの利用時にエラーが発生した際や、契約内容の確認を希望する際などに、加盟店が電話で問い合わせる。問い合わせ数は「月間1万件におよび、SV(Supervisor)、管理者、オペレーター含めて約30名の体制でサポートに当たっている」と岡田氏は説明する。
コンタクトセンター運用の現場では、オペレーター育成に時間がかかり、新規採用が難しい状況にある。福山氏は「年齢層は上昇しており、若年層が選ばない職種になりつつある」と危惧する。そうした中で「加盟店デスクでのサポート業務の効率化は経営課題に挙げられた」(同)
PoC止まりを防ぐために小規模導入から着手
現在、日本企業によるAI活用の取り組みは前進している。しかし、PoC(Proof of Concept:概念実証)を経て本格稼働へ以降し、一定の成果を収めるのは簡単ではない。
実際に、JCBは開発過程で課題に直面したという。例えば「導入前のPoCでは、正しく回答できる割合は約95%に達していたが、実際に本番導入した後に回答精度が低下した」(岡田氏)などだ。運用する中では「コストの増大やセキュリティリスクへの対応も求められた」(同)
AIエージェント導入を成果につなげるためのポイントとして、福山氏は「(1)『どこから始め、どう広げるか』(2)『成果をどう測り、現場でどう運用するか』(3)『セキュリティの合意をどう取るか』」の3つを挙げる。AIエージェントには、対話AIサービスを手掛けるIVRy(アイブリー)のサービスを選定した。
ポイント1:どこから始め、どう広げるか
カード会社であるJCBは、日々の業務でユーザーの個人情報を取り扱う。福山氏は「個人情報と生成AI技術は相性が悪いため、AIサービス導入時にはコンプライアンス部門による厳しい審査が入る」と説明する。
取り組みを進めやすくするため、カード情報を取り扱わず「Q&Aの範囲で完結するため成果が出やすく、かつ自身にもかつて統括経験があった業務として加盟店デスクを選定した」(福山氏)という。
開発は「PoCで終わらせず、最後まで完遂するイメージを持って進めることが肝要」(福山氏)になる。また、社内にある種々の壁を突破するためにも「ビジネス部門単体で進めるのではなく、システム部門と共同して進めた」(同)
AIエージェント導入プロジェクトは、2025年10月に開始した(図1)。まずは音声認識のための「Q&Aを100個以上登録した上で、オペレーターの協力を得て架電テストによりAIの認識精度を検証し、チューニングを繰り返した」(岡田氏)という。
並行してセキュリティの論点を解消するために「個人情報へのマスキング機能を実装したほか、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)の処理を日本国内のリージョンで実施できる体制にした」(岡田氏)

