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シアトルがシリコンバレーを超えるデジタル発信源に【第1回】

工藤 卓哉(アクセンチュア)
2018年9月13日

デジタル化の最前線と言えば、だれもが米カリフォルニア州のシリコンバレーをイメージすることだろう。だが今、そのシリコンバレー以上にデジタル化の“発信源”になっているのが、その北側に位置する米ワシントン州のシアトルである。米Amazon.comや米Microsoftが本社を置くだけでなく、多くのIT企業がシアトルへの進出に力を入れている。住宅価格の伸びも主要20都市のトップに立つなど、全米を牽引する成長都市になりつつある。

 米シアトルと言えば、今やクラウドコンピューティングの領域で競合するAmazon.comやMicrosoftに加え、Tableau、Expedia、Getty Imagesなど、皆さんが普段、一度は耳にしたことがあるIT関連企業が数多く本社を構えている。最近ではAmazonの創業者兼CEOのジェフ・ベソス氏が設立した先端の航空宇宙関連事業を手がけるBlue Originも、この地域に進出してきた。

 すでに、パブリッククラウドサービスの三大巨頭であるGoogleのオフィスや、Amazon、Microsoftの両本社が、車でほぼ15分の圏内に立地しており、この地ではAI(人工知能)における機械学習エンジニアなどは、まさに引っ張りだこで、デジタル人材の争奪戦が日々繰り広げられている。高度人材の採用市場が好況に沸いている影響から、街自体に活気と「超」が付くほどの勢いを感じる。

 緑豊かな素晴らしい住環境を求めて、シリコンバレーの企業群が拠点を移す動きがみらる。全米住宅価格指数(S&P/ケース・シラー住宅価格指数)によれば、シアトルのそれは主要20都市の中で1位の伸びを示すなど、全米を牽引するほどの成長都市になりつつある。ちなみに、私が購入した自宅は、Googleオフィスから車で5分程度の距離にあり、その実売価格は過去2年間で60%強近く上昇した。周囲の住宅価格も同様に高い伸び率を見せている。

 その自宅は、Googleのお膝元ということもあり、「Google Nest」などの機械学習機能を持つスマートホーム用のデバイスが備え付けられた新築だった。集中空調制御システムにより冷暖房と湿度を容易に管理できる。

 室温であれば、「夜は華氏74度(摂氏で23度相当)、昼間はそれよりは華氏で2度から3度ほど高め」という我が家の嗜好性に合わせて学習内容を補正しながら自動管理してくれる。冷暖房の消し忘れもなく大変快適に過ごせている。

 自宅の外からもモバイルアプリケーションで制御可能である。家族で日本に旅行に出る場合などは、写真1のように、モーションセンサーとスマートフォンの位置情報をパターン認識の決定因子に入れておくだけで、スマートフォンを持って車庫から離れた時点で自動的に空調が切れるようになっている。

写真1:自宅の壁に掛けられたモーションセンサー(左)とスマートフォン上の管理画面

 そんな時でも自宅にはベビーシッターさんがいたりすることもある。すると、Nestが私が自宅を離れたと感知して空調を自動停止していても、その後にベビーシッターさんの動きをNestが自宅内部で感知すれば、空調は再起動される。つまり、人がいれば、そのインプットは位置情報を上書きできる「上位条件節」に指定されているため、空調設備が起動され常に快適な温度を保てるという仕組みになっている。これは使ってみると本当に便利だ。

徒歩5分で国立公園にたどり着く自然豊かな地域

 このように紹介すると、ゴミゴミした都会を連想されるかもしれないが、そんなことは全然ない。我が家から徒歩5分程度のところに国立公園があったり、500m圏内では山から迷い込んだクマが目撃されたりと、この街が属するやワシントン州自体が“The Evergreen State”と呼ばれるほどに自然が豊かなエリアなのである。

 たとえば、街の中心部から30分もドライブすれば、近くを流れる川で毎年産卵のために遡上してくる大きな鮭の大群を眺められる。鮭の群れを見ながら、その場で炙ってもらった鮮度抜群のキングサーモンをいただくという贅沢にも浸れる訳である。さらに森では、運が良ければキツツキやハチドリに遭遇できるが、ウサギやリス、アライグマやシカなどを見かけるのは至って普通のことだ。

 ちなみに、アクセンチュアでデジタルトランスフォーメーションに特化したアクセンチュア デジタルにおいて主にデータサイエンスを手がけるアクセンチュア アプライド・インテリジェンスをはじめ、私が所属するアクセンチュアの北米拠点では、意欲の高い北米の大学・大学院卒業生を積極的に募集している。豊かな環境の中でアナリティクスなどを実践したい方には奮って応募いただきたい。

 本連載では、こうした豊かな自然環境を舞台に繰り広げられているデジタル化に向けた最前線の動きを、生活者の目線を通して日本の皆さまにお届けしたいと考えている。デジタル化への取り組みは待ったなしだが、その背景を含め本質に近づくことが重要であるからだ。

 さて、次回はシアトルでも話題になっているAmazonの無人店舗「Amazon GO」を視察した際の様子をレポートすることにしたい。

工藤 卓哉(くどう・たくや)

アクセンチュア Data Science Center of Excellence グローバル統括、アクセンチュア アプライド・インテリジェンス日本統括マネジング・ディレクター 兼 ARISE analytics Chief Science Officer。