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戦略的提携を結んだ米NVIDIAの強みと、世界一周の出張で感じたAI戦略の世界共通課題とは【第5回】

工藤 卓哉(アクセンチュア)
2019年4月24日

気付けば、第4回の公開から3カ月あまりが過ぎてしまいました。この間、私自身は、米ニューヨーク、米サンフランシスコ、スペイン・バルセロナ、伊ミラノ、独フランクフルト、東京、米サンノゼ、米サンタクララ、そしてサンフランシスコと地球をグルっと回るなど多忙を極めておりました。ようやくシアトルに戻ったところで、サンノゼで3月に開かれた米NVIDIAの年次カンファレンス「GTC 2019」などについて報告します。

 日本ではお花見シーズンを終え、いよいよゴールデンウィーク本番といったところでしょうか。余談ですが、桜と言えば、実は米シアトルのワシントン大学構内にも立派なソメイヨシノの並木があり、全米有数の桜の名所として知られています。シアトル在住の日本人にとっても馴染みの深い場所です。

 ワシントン大の桜が咲く前の3月、シリコンバレーの中心である米サンノゼで開かれた米NVIDIAの年次カンファレンス「GTC 2019」に参加してきました。

 NVIDIAと言えば最近は、AI(人工知能)向け半導体の”雄”として知られ、GCP(Google Cloud Platform)やMicrosoft Azure、AWS(Amazon Web Services)など、主要なクラウドサービス上で学習用のコンテナイメージを実行する際に目にする方も増えているはずです。筆者の周りでは、ディープラーニングのイメージが、ますます強くなっています。

 しかし元々は、曲面など複雑な空間を表現する映像描画のコアテクノロジーとしての地位を確立してスタートした企業です。そのため、一般的には米Microsoftの「Xbox」や任天堂の「Nintendo Switch」といったコンピューターゲームなどを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

組み込み用AIプラットフォーム「AGXファミリー」が登場

 そのNVIDIAは今、自動運転におけるGPU(Graphics Processing Unit)大手として不動の地位を確立しつつあります。世界の主要な自動車関連企業のほとんどが、NVIDIAと関係があることを踏まえれば、それも頷ける話でしょう。実際、同社のGPUは、BMWやLexus、Tesla、Audiなどの高級ブランド車に、こぞって採用されています。

 他の半導体事業者と違い、ハードウェア分野での人材採用や投資だけではなく、周辺のソフトウェアエンジニアリングに関連する技術者層が非常に厚いことも業界周知の事実です。筆者から見ても同社は、技術を実践応用する部分に相当に経営的な力点を置いていることが、GTC 2019の基調講演などからも、うかがい知ることができました。

 GTC 2019の模様に関しては既に日本語でも、さまざまな報道がなされているため、ここでは細かく触れませんが、特筆すべきは同社CEOのジェン・スン・フアン氏(筆者はジェンセンと呼んでいます)が、最新の組み込み用AIプラットフォームである「NVIDIA AGXファミリー」について、激しい熱量を持って語っていることです。医療用の「Clara AGX」や自動運転向けの「DRIVE AGX」などは、彼の経営ビジョンが垣間見られるソリューションと言えます。

 ジェンセンの基調講演では、アクセンチュアが「クラウド機械学習パートナー」として紹介されました。写真1のスクリーン中央の「CLOUD ML SERVICES」の中で、小さくて見にくいですが、AWSやGoogle、Microsoftなどと並んで紹介されています。

写真1:「GTC 2019」の基調講演に登壇したCEOのジェン・スン・フアン氏(左)。右端にはアクセンチュアがロゴとともに紹介されている

 加えて、筆者の直属の上司で、アクセンチュア・デジタルのグループ・チーフ・エグゼクティブであるマイク・サトクリフ(Mike Sutcliff)の名前とコメントもスクリーンに投影されました。これには個人的に感慨深いものがありました。

 なお、アクセンチュア自体はクラウドサービスを提供するプロバイダーではありません。ですが、セキュリティやアプリケーションレイヤー、運用・保守などを含むクラウドマネージドサービスのほか、機械学習サービスを大手クラウド事業者と組んで提供しています。