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戦略的提携を結んだ米NVIDIAの強みと、世界一周の出張で感じたAI戦略の世界共通課題とは【第5回】

工藤 卓哉(アクセンチュア)
2019年4月24日

機械学習関連ビジネスは業界向けソリューションが収益の中心に

 こうした背景には、NVIDIAとアクセンチュアの戦略的な提携があります。ジェンセンやNVIDIAの執行役員クラスのメンバーとは過去数カ月にわたり、AI領域での協業に向けてサンタクララにある同社の本社で毎週のように討議を重ねてきました。

 手前味噌になりますが、アクセンチュアは世界120カ国以上の顧客にサービスを提供しています。NVIDIAとのパートナーシップにより、GPUの供給先は間違いなく増えると言っても過言ではありません。

 両社はNVIDIAが推進する機械学習をGPUで高速化するためのオープンソースプラットフォーム「RAPIDS」でも提携しています。世界的な動向として、ほとんどの機械学習関連ビジネスは、業界向けソリューションが収益の中心になってきています。あらゆる業界に入り込んでいる弊社のような会社とは相性が良いのです。

 ジェンセンはNVIDIAのCEOとして、機械学習で自走化(自律化)する領域をさらに拡張するという夢を持っています。その夢を実現するために今後も、最新のGPUを世界に向けて供給していくのでしょう。この業界に身を投じている者の一人して、大変に夢のある話です。筆者も「子どもたちの未来に何を残せるのだろうか?」といったことを考えながら、その一翼を少しでも担えるよう頑張りたいと思います。

 ちなみにGTC 2019に先立つ出張の一環では、スペイン・バルセロナで2月に開かれたMWC(モバイル・ワールド・コングレス)にも参加してきました(写真2)。今回では詳しく紹介しませんが、会期中、筆者はKDDIのグループ会社であるARISE AnalyticsのChief Science Officerとして、予知保全ソリューションに関するワークショップを海外のクライアント向けに開催するなど、慌ただしく過ごしていました。

写真2:MWCでの一コマ。入口には2019年のテーマ“Intelligent Connectivity”の文字が見える

AI戦略は、ずばり人材戦略である

 さて写真3は、アクセンチュアのデータサイエンス部門の幹部社員や主力のデータサイエンティストとニューヨークで会議を開いた際の一枚です。前方中央が筆者です。彼らと議論する中で実感したのは、AI領域の課題として世界中に共通するのは、ずばりタレントマネジメント(人材戦略)に尽きるということです。

写真3:アクセンチュアの仲間たちと(写真中央前列が筆者)

 もちろん国により、競合の特徴も、市場や業界の状況も全く違います。ですが、次のような視点が重要なことは共通です。

「正しい戦略の下で無理や無駄なく、必要な人材や研究開発対象に投資が振り向けられているかを確認しながら、世界中で獲得競争が繰り広げられている人材のモチベーションを適切に管理しつつ、彼ら彼女の情熱をいかに解き放つような環境を用意できるか」

 さらに伊ミラノや独フランクフルトでは、弊社グローバルの幹部社員と戦略的な議論を深める機会を得ました。AIや機械学習分野への投資は、景気の動向を見極めながらも、正しく、かつ大胆に実行すべきという論調が主流を占めていたことが印象に残っています。次回もご期待ください。

工藤 卓哉(くどう・たくや)

アクセンチュアData Science Center of Excellence グローバル統括 兼 ARISE analytics Chief Science Officer。