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社会のデータ連携・共有のための基盤の設計・調査機関、IPAが設立

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2020年5月18日

業種・業界を超え社会全体でデータを連携・共有するのに必要な基盤や制度などを設計・調査する機関として、IPA(情報処理推進機構)が2020年5月15日に「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)」を設立した。「Society 5.0」(超スマート社会)の実現に必要な仕組みや制度の設計/調査、およびそれらの実行に必要な人材育成に取り組み、日本の産業アーキテクチャーの設計力強化を目指す。同日に発表した。

 IPA(情報処理推進機構)が2020年5月15日に設立した「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC:Digital Architecture Design Center)」は、「Society 5.0」(超スマート社会)の実現に必要なデータの連携・共有を可能にする仕組みや制度を設計するための推進機関。活動予定や調査報告書、成果物、アーキテクチャーに関する教育資料などをDADCのWebサイトで公開していくという(図1)。

図1:「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC:Digital Architecture Design Center)」のWebサイトにおける取り組み内容の説明例

 DADCの初代のセンター長には、ファナック取締役副社長執行役員の齊藤 裕 氏が就任した。日立製作所出身の同氏は、システムイノベーションセンターのセンター長でもある。

 DADCが果たす機能は、(1)アーキテクチャーの設計、(2)専門家の育成、(3)調査および国際連携の3つ。アーキテクチャの設計では、政府や事業者の依頼に応じて、異なる事業者間や社会全体でデータやシステムを連携するのに必要な全体設計図としての「アーキテクチャー」を設計する。その設計を主導できる専門家も育成する。

 具体的な優先分野として、(1)デジタル化に伴い新たな規制体系の確立や規制手法の高度化が求められる規制分野、(2)より効率的で無駄のないシステム構築が求められる政府・公共調達分野、(3)業種横断で多様なプレーヤーが関与するため中立的な全体整理が求められる産業基盤分野を挙げる。

 まずは、スマート保安、自律移動ロボット、モビリティサービスの3テーマにおけるアーキテクチャーの設計に着手する。これらは、2019年度にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から調査を受託した領域である。今後、各テーマのプロジェクトリーダーや主要なアーキテクトは、公募する予定だ。

 さらに、将来的にアーキテクチャーが求められるであろう領域に関しては、その実現可能性を調査するほか、連携に向けた国内外の関係機関との検討・情報交換にも取り組む。2020年夏からは、Soceity5.0の実現に資する提案を民間等から公募するとしている。

 DADCが設立されたのは、同日に「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」が施行されたため。同法律は、データやデジタル技術を活用し経済発展と社会的課題の解決を図ること、すなわち「Society 5.0」(超スマート社会)への取り組みを推進するためのもので、そのための関連業務が、同法律においてIPAに追加された。

 DADCが取り組むテーマは、アーキテクチャーに関する政策方針を議論する政府会議が決める。そのため2020年度後半には、政府会議に対し、アーキテクチャー設計の具体的な方向性について技術的・専門的な知見から助言する有識者会議を編成する予定という。

 有識者会議の座長には、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の白坂 成功が就任し、議論を取りまとめる。

 DADCは、この有識者会議およびIPAの社会基盤センターと連携することで、多様なステークホルダーの参画の元、透明性・公平性・中立性を確保したアーキテクチャーを設計するとしている。

 なおDADCは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止にもアーキテクチャーの観点から貢献するとしている。

 具体的には、内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」と連携し、GPS等から得られる人流データの分析結果を内閣官房のWebページで公開する事業を2020年5月から開始している。その他の必要な業務についても政府・産業界などと連携しながら進めるという。