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清水建設、豊洲スマートシティに投入する「建物OS」をCEATEC 2020 ONLINEで披露

“人の幸せ”につながるデジタルツインを構築へ

岡崎 勝己(ITジャーナリスト)
2020年10月20日

ゼネコン大手の清水建設は、オンライン開催となった「CEATEC 2020 ONLINE」に出展し、“人の幸せ”に貢献するスマートシティのあり方と、そのための技術を提示する。その具体的な中身やCEATECへの期待などを、清水建設 技術研究所 副所長の高木 健治 氏をはじめとするコアメンバーに聞いた。(文中敬称略)

−−CEATECへの参加は今回、2回目です。2019年の初出展の手応えはどうでしたか。

高木 健治(以下、高木) 清水建設 技術研究所 副所長の高木 健治です(写真1)。2019年に、CEATECに初めて参加しました。異業種交流によるオープンイノベーションの促進が目的でした。

写真1:CEATEC 2020 ONLINE出展の清水建設のコアメンバー。左から、豊洲スマートシティ推進室長の宮田 幹士 氏、技術研究所 副所長の高木 健治 氏、技術研究所 技術広報グループ長の村田 明子 氏

 建築業界も他業界と同様、デジタル化が進んでいます。当社でも,設計から施工、メンテナンス段階まで一貫して活用できる、建物の3次元モデルBIM(Building Information Modeling)や、ロボットを使った建設現場での、ものづくりなどを実施しています。

 そうした中であっても、デジタルの進化は日進月歩です。デジタルトランスフォーメーション(DX)関連の技術的な蓄積は、自社だけでの技術開発ではスピード感に懸念があります。そこで、開発速度を高める一番の近道と考えたのが、大学やIT企業などとの共同開発であり、そのために着目したのが複数業種の技術者が数多く訪れるCEATECです。

 前回の出展を踏まえ、これまでにない企業とのコミュニケーションも少なからず生まれてきています。展示した音声ナビゲーションシステムなどを社内外に周知する機会にもなり、新たなプロジェクトの引き合いが増えたりしています。

 なかには「もっと早く分かっていれば」といった声を頂戴するなど、自社技術の発信の必要性も知るところにもなりました。

今回のコンセプトは「Smart Innovation City」

−−2020年の出展の目玉は何になりますか。

宮田 幹士(以下、宮田) 清水建設 豊洲スマートシティ推進室長の宮田 幹士です。今回は、CEATEC 2020 ONLINEの「ニューノーマルエリア」と「企業エリア」において、当社が取り組んでいるスマートシティである「豊洲スマートシティ」について紹介します。

 今回のCEATECでは,「Smart Innovation City」をテーマに掲げています。これは、清水建設グループが2030年に向けた長期ビジョンで目指す「スマートイノベーションカンパニー」としての未来のまちづくり、すなわち,「建設事業の枠を超えた自己変革と、多様なパートナーとの共創を両輪にした時代を先取りする価値創造」による「安心・安全」「健康・快適」「サステナブル」な社会の実現をゴールに位置付けています。

 豊洲スマートシティは、その実証フィールドの1つです(図1)。東京・江東区の豊洲エリアにおいて「豊洲に暮らし、働き、訪れる多様な人々に対しての、個々人のニーズを充足する次世代型サービスの提供」を目的にしたプロジェクトです。

図1:豊洲スマートシティのイメージ図

 国土交通省が実施するスマートシティモデル事業で「先行モデルプロジェクト」に選定されており、当社は幹事企業の1社として、関連企業や技術提供企業と連携しながら、まちの課題解決に向けた取り組みを検討しています。

 これまでスマートシティは、技術的な可能性から語られがちでした。今回の当社の展示では、都市での取り組みを通じて、技術を人の暮らしに落とし込み、快適さや幸せにどう役立つかを提案します。