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  • 〔誌上体験〕IBM Garage流イノベーションの始め方

常に最高を目指す組織カルチャーを育むための実践ポイント(前編)【第3回】

木村 幸太、黒木 昭博、中岡 泰助(日本IBM IBM Garage事業部)
2020年11月18日

(2)組織の視点:多様性のあるチームをどのように編成するか

 多くの人々は、自分と同じ思考を持つ人を仲間に入れ、活動を進める傾向があると言われている。同質的なメンバーが集まると、意識と行動の変容が進みにくい。例えば、既存事業において優れた業績を上げている人のみで構成してしまうと、これまでの成功体験に縛られることも起こり得るので注意が必要だ。

 一方で、多様性の重要性は近年、さまざまなところで指摘されており、IBM
Garageでも、これを重視している。多様性は、課題や解決策の可能性を拡げることに大いに役立つからである。

 では実際に、あなたがメンバーを集める状況に直面した場合、どのような考え方で集めるのがよいのかを考えてみてほしい。

アクションa :部門横断で公募し、やる気のある人を集める
アクションb :スキル、行動特性、思考を考慮し、集める
アクションc :社外の人材に多様性を求める

 IBM Garageでは、アクションbにあるスキル、行動特性、思考の3つの側面を考慮し、多様性を持つメンバーを編成することをお勧めしている。アクションaとアクションcは、プロセスとしてはあり得るが、人選する際の見るべきポイントを押さえていないので不十分である。事例も交えて具体的にみていこう。

実践ポイント2-1:スキル、行動特性、思考の3つから多様性を捉える

 スキルは、企画、デザイン、エンジニアリングといった知識や技術に関するものから、ファシリテーションなどのソフトスキルも含む。行動特性は物事を始めるのが得意な人、仕事を確実に終わらせるタイプなどだ。思考は想像力豊かに考えるタイプや、論理を突き詰めるタイプなどを指す。

 チーム編成は、唯一絶対の解があるわけではない。だが、これら3つの側面から工夫を凝らし、時に社外からの採用も含めて編成を考える(写真2)。

写真2:スキル、行動特性、思考の観点から多様性あふれるチームを編成する

 気をつけるべきは、小規模なチームから始め、徐々に拡げていくことだ。ある企業では、自社内で大量の人を集め大規模に組織化すること優先した結果、それぞれの考えを主張するばかりでカルチャーの変革に至らなかった。

 これを避けるためには、米Amazon.comのCEO(最高経営責任者)であるジェフ・ベゾス氏が提唱したとされる「ピザ2枚ルール」が有効な考え方である。これは「1つのチームはピザ2枚を囲める人数以下にする」というもので、メンバー1人ひとりの主体性を維持しやすい10人以下でチームを構成する。

 多様性があるだけに、立ち上げ初期は、相互理解のためのチームビルディングに十分な時間をかけることが必要になる。

 次回、後編では(3)実践作法と(4)協働する場について紹介する。

木村 幸太(きむら・こうた)

日本IBMグローバル・ビジネス・サービス事業本部 IBM Garage事業部 部長。IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)に入社後、さまざまな業種の企業への営業やCRM、マーケティング戦略の策定・実行支援、BPR、システム化構想から導入など経験する。2018年1月にスタートアップを支援するIBM BlueHub、同年10月よりIBM GarageのLeadに着任。近年は、イノベーションやデジタル変革をテーマに、デジタル戦略やアジャイル案件を数多く手がけている。

黒木 昭博(くろき・あきひろ)

日本IBM グローバルビジネスサービス事業本部 IBM Garage事業部 マネージングコンサルタント。事業変革の構想立案や、それに伴うデジタル活用、新サービスの企画コンサルティングを手掛ける。企業と顧客が一体になって価値を生み出す共創を促進する手法の研究開発や実践にも取り組む。著書に『0から1をつくる まだないビジネスモデルの描き方』(日経BP社、共著)、『徹底図解 IoTビジネスがよくわかる本』(SBクリエイティブ、共著)がある。修士(経営学)。

中岡 泰助(なかおか・たいすけ)

日本IBM グローバルビジネスサービス事業本部 IBM Garage事業部 コンサルタント。フランス プロヴァンス大学院 文化人類学修士課程修了後、日系メーカーの技術営業職を経てIBMに入社し、米国・欧州・日本における新規事業企画、業務改革等のコンサルティングに従事。アフリカのガーナやマリでの調査経験を有し、ブータンの開発政策に関する著作『Le développement basé sur le Bonheur National Brut』がある。