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  • 〔誌上体験〕IBM Garage流イノベーションの始め方

Reason:AI技術を活用しより良い意思決定を導く【第12回】

木村 幸太、野村 哲也(日本IBM IBMコンサルティング事業本部)
2021年11月30日

前回は、サービスを実際に運用するための取り組みとして「Operate」を説明した。今回はIBM Garageのコンポーネントの1つである「Reason」について説明する。Reasonは、Culture、Learn同様に共通コンポーネントに位置する。Garage全体にわたり、AI(人工知能)/データサイエンスをプロダクトに組み込み、より良い意思決定を導くためにある。

 事業環境が目まぐるしく変化する昨今、当初意図した通りの価値を提供し続けることは難しい。新しい価値を提供し続けるためには、プロダクトのスケールとともに蓄積されるデータをAI(人工知能)/データサイエンス技術を活用し価値、すなわちユーザーにとってのより良い意思決定に転換していかなければならない。

 IBM Garageが対峙する世界は不確実性の高い世界だ。そのような世界では、最短経路で価値を探索・発見し、実践を通じて検証しながら価値を創出する「Speed To Value」が重視される。

 そのSpeed To Valueは、AI/データサイエンスの活用という文脈においては、どのように進めていくべきだろうか。その背景と採るべきアプローチ、そして参画するデータサイエンティストに求められる考え方について解説する。

デジタル変革は企業のあり方全体を変革する“第2章”に

 デジタルトランスフォーメーション(DX)あるいはデジタル変革という言葉が登場してから久しい。デジタル変革は当初、機能レベルから始まり、デジタルと親和性が高い20%の業務領域を対象に実証実験を通じた変革が進められた。

 現在は、機能レベルの変革から、企業のあり方全体を変革する“第2章”の段階にある、または移ろうとしている。この段階では、80%の業務を対象にデジタル化を通じた変革が求められる。そのため実証実験ではなく、本格展開を前提に取り組む必要がある。

 その先の“第3章”になれば、社会のあり方全体の変革につながっていくとIBMはとらえている(図1)。

図1:デジタル変革の3つの進展段階。現在は“第2章”に到達し、企業における業務全体のデジタル化が必要になっている

 第2章、第3章をAI/データサイエンスという観点でとらえれば、価値創出という意味で難易度が高まることを意味している。デジタルマーケティングやスマートファクトリーなど、単一機能で、かつ新たに取得可能なデータを前提にデジタル変革を進められる領域は第1章で着手されている。

 残る領域は、第1章では迂回されていた領域だ。つまり、機能を横断し、新規のデータに加え既存データの活用が求められる、あるいは多様なステークホルダーの中での全体最適の追及が求められる。この困難さの背景をデータに焦点を当てて紐解いてみよう。