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  • CX(顧客体験)を高めるCDPの基本とあるべき姿

顧客データの統合的な管理・分析を可能にするCDPの基本

齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)
2022年9月9日

 CDPが収集・管理するデータには、(1)顧客の氏名や生年月日、性別などの「属性データ」、(2)自社サイトへのアクセスログやスマートフォンやタブレットなどの利用の有無、購買履歴などの「購買データ」、(3)DMやキャンペーンの実施履歴や公式SNSへの登録の有無、店頭やフロアでの回遊行動などの「行動データ」などがあります。

 外部連携により、店舗へのチェックインの有無や、クーポン利用の有無、位置情報など、自社外の仕組みを介して得られるデータも分析対象にできます。

 これらさまざまなデータを組み合わせることで、顧客1人ひとりの“実像”に迫り、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」やカスタマージャーニーをより強く意識したマーケティング施策を実践できるようにします。

 そのためにCDPが提供する機能の1つがデータ管理です。データのサイロ化を防止し、複数の部署間での情報共有の推進、データ分析の高速化、運用管理の効率化などを図ります。MA(Marketing Automation)ツールやCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)システム、DSP(Demand Side Platform:広告プラットフォーム)などとの連携機能も提供します。

 加えて最近では、顧客データという個人情報を扱うことへの社会の関心が高まったことをうけて、セキュリティやコンプライアンスの観点から、個人情報の保護や、顧客データへのアクセル認証、外部との安全なデータのやり取りといった機能を提供するCDPもあります。

CDPの価値を最大限に引き出す自社の事業戦略が重要に

 CDPとプライベートDMPが同様の仕組み・機能を提供したり、CRMやSFA(Sales Force Automation:営業活動支援)のシステムが顧客データ管理の機能を提供し始めたりと、実はCDPには明確な定義が定まっていません。多種多様なベンダーがCDPをうたう製品/サービスを提供しています。

 例えば、CDPの普及促進団体である米CDP Institute(CDP協会)が作成するCDPベンダーのディレクトリーには、212社(2022年7月時点)が登録されています。そこではCDPのタイプが(1)Data CDP、(2)Analytics CDP、(3)Campaign CDP、(4)Delivery CDPなどに分けられるなど、提供する機能の範囲もさまざまなようです。

 CDP協会はCDPの要件として、(1)パッケージソフトウェアであること、(2)あらゆるデータを統合し任意の期間活用できる顧客データベースであること、(3)他の分析システムやマーケティングツールからアクセスできることの3つを挙げています。

 つまり、データウェアハウスやデータマートなどを構築する手間がかからず、運用や活用のために専門的なスキルが不要なパッケージであり、顧客データベースとして安全かつ継続的に管理・運用でき、他システムとはファイル交換やデータベース検索、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)で連携できる仕組みです。

 ただパッケージソフトウェアとはいえ、CDPは全社共通のデータ基盤に位置付けられるだけに、複数の部門・部署をまたがって共通に利用するための社内コンセンサスを得る必要があります。CRMシステムやMAツールの延長で特定の部門だけで導入するのではなく、保有する事業部門やDXの推進部門、IT部門などと連携しながら、CDP活用を推進するための体制を整備することが重要です。

 さらに、実際にデータを分析し活用するためには、自社なりのマーケティング戦略や方法論も不可欠です。CDP活用に向けては、ユースケースや各種テンプレートなども多数用意されています。ですが、競争優位につながる取り組みは自社だけの強みとして推進しなければなりません。

 CDPは、顧客を軸にデータ分析に基づいて行動する“データドリブン経営”を実現するための土台です。今後はAI(人工知能)技術などを取り込み、専門家や経験者に頼らない顧客データ分析や各種施策の実行が可能になるとも言われています。CDPを構築・運用することは、データドリブンな企業文化を醸成することに他なりません。

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