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顧客と直接つながる時代に求められるCDPのあるべき姿

電通デジタルが提案する顧客エンゲージメントの高め方

2022年10月20日

デジタルトランスフォーメーション(DX)における最大の目標がCX(Customer Experience:顧客体験)の向上である。そのために顧客に関するデータを統合するCDP(Customer Data Platform:顧客情報基盤)を構築・整備する動きが高まっている。しかし、電通デジタルのアカウントイノベーション部門でコンサルタントを務める高橋 司 氏は「単にデータを収集・統合しただけでは、CX向上に寄与するCDPにはならない」と指摘する。CXを高めるためには、どんな取り組みが重要で、どのようなCDPが求められるのかについて、高橋氏に聞いた。

 CX(Customer Experience:顧客体験)を高めることへの関心が、従来に増して高まっている。その理由を、電通デジタル アカウントイノベーション部門 アカウントディベロップメント部 コンサルタントの高橋 司 氏は、次のように説明する。

 「コロナ禍での対面販売の制限や回避もあり、消費者の購買行動はオンライン中心へと急激にシフトしたためです。そのことは同時に、企業が顧客に関する行動データを大量に取得できるようにもしました。結果、マーケティング活動も、顧客1人ひとりの嗜好やタイミングなどに応じて最適な情報を提供したいというニーズが、これまでになく高まっています。リアルな店舗を含めて、メールやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など複数のチャネルを使った双方向の関係を作り出し顧客に良質な購買体験を提供することが企業の生命線になりつつあるのです」

写真:電通デジタル アカウントイノベーション部門 アカウントディベロップメント部 コンサルタントの高橋 司 氏

メーカー自身によるブランディング強化が新たなCXを求める

 CX向上への関心が高まる、もう1つの理由として高橋氏は、「購買行動のオンラインシフトによりメーカー自身による直販ビジネスの立ち上げやブランディング活動の強化があります」と指摘する。具体的には、自動車メーカーが、クルマを月額利用料型で提供するサブスクリプション(購読型)サービスを展開したり、衣料メーカーが直販専用ブランドを立ち上げ自社のWebサイトでブランドイメージや世界観を発信したりするなどだ。そこでは、「ブランドへの共感を創出し、顧客との新たな関係やコミュニティを作るのが狙い」(高橋氏)になる(図1)。

図1:メーカーと小売店/販売代理店の間で顧客との新たな関係構築が模索されている

 オンラインシフトが進んだとはいえ、消費財の購買行動の中心はリアルな店舗である。CXを高めるための顧客接点では、小売業の影響力の大きさは変わらない。小売業自身、スマートフォン用アプリケーションを開発・提供するなどで顧客との関係強化に取り組むほか、低価格あるいは健康志向などをうたうプライベートブランド(PB)商品の開発に乗り出すなどメーカー的な側面を強めつつある。「メーカーと小売業者が顧客データや購買データを共有する動きもあるものの、CXを高めるためにメーカー自らが顧客データを取得し、商品開発やブランディングに活用する動きが強まるのは間違いありません」と語る。

 さらに高橋氏は、「世の中のSDGs(持続可能な開発目標)の浸透を受け、サスティナビリティ(持続可能性)を考慮した、ものづくりが求められるなかで、メーカーによるブランディング活動は、ますます重要になってきます」とも言う。

 例えば、米国のあるアパレルブランドは、これまでも自然環境の保護・保全に向けた募金活動などを打ち出したブランディングを展開してきた。それが最近は、「商品を、より長く愛用してもらうためのメンテナンス情報を提供したり、リサイクル商品の環境負荷の低さを訴えると同時に回収活動への参加を促したりと、商品を購入した後の顧客との継続的な関係構築に力を入れてきています」(高橋氏)

 すなわち、これまでのマーケティング活動が、顧客が商品を購入するまでに焦点が当たっていたのに対し、これからのマーケティング活動では、「ブランド認知から検討、購入を経て、その商品を使い、メンテナンス・廃棄し、さらに再生品を買い替えるまで、いかに関係性をつなげていくか。商品の購買には直結しない情報の提供を含め、顧客のLTV(Life Time Value:生涯価値)を高めるかを強く意識する必要があります」と高橋氏は強調する。