- Column
- 目指すべきDXの実現に向けた内製化のススメ
三越伊勢丹システム・ソリューションズ、グループのDX経験活かし“内製化”を支援
DX人材育成に向けDevOps基盤と方法論、実践型スキルを移転
技術一辺倒ではなく店頭での接客ノウハウから目標を定める
DevOpsやアジャイル開発、さらにはDXという文脈においては、「ともするとツールの導入が目的化してしまいます。常に『目的は何か』を問い直す“起点に立ち返る”姿勢が重要です」と、ICTアプリケーションサービス部 プラットフォーム第4担当の小出 諒 氏はアドバイスする。その背景には「苦い経験も活かされています」(小出氏)ともいう(写真2)。
苦い経験とは、2022年1月に実施したチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」に連動したオンラインショップでの不具合である。同祭典は予想を上回る人気を得、オンラインショップへのアクセスが殺到。認証システムがダウンした結果、利用者が一時、サイトにログインできない状況になってしまった。マイクロサービスを組み合わせ、機能を細かく分割していたために原因追求に時間を要したことも重なった。
2023年1月にもサロン・デュ・ショコラは開催される。「IMSとしては同じ失敗は繰り返せません。しかし、ここで技術的思考に凝り固まっているとサーバーの増強を検討しがちですが、サーバーを増強しても、いつかは限界が来るため、絶対の安心は得られません。本来のゴールは『チョコレート好きのお客様に買い物を楽しんでもらうこと』です。そのために何ができるかを考えることが重要なのです」(平山氏)。
“おもてなし”を美徳とする店頭であれば、「顧客が売り場に殺到しそうなら、整理券を配布し、お客様には順番に入店頂くようにするはずです。これと同じような仕組みをオンラインショップにも設けることにしました」と平山氏は話す。具体的には、ログイン認証の前段に仮想的な待合室を設置し、何分後にログインできるかの目安を表示した。「オンラインでも待ち時間をお伝えし、適切にご案内できれば、お客様も納得してお買い物してくださるに違いありません」(平山氏)と判断した。
もちろんこの仕組みはIMSの一存では決められない。店頭を預かる営業本部の担当者などステークホルダーを巻き込んで議論を重ねた。小出氏は「現実解の導き方や現場の巻き込み方にも、我々の経験知が凝縮されています」と話す。
2023年のサロン・デュ・ショコラ当日は、監視ツールの画面や「Twitter」に流れる顧客のコメントを関係者一同が凝視した。今回はトラブルもなく、利用者からもポジティブな反応を得られるなど、全員が胸を撫で下ろしたという。
相手の成熟度に応じて支援体制を用意
IMSが提供する内製化支援サービスでは、これまでにIMSが獲得してきたスキルやノウハウを、顧客となる事業会社のプロジェクトを共に進める中で直接提供していく。ただ受け手の側にすれば、自らの理解度や成熟度から不安を抱くかもしれない。
この点についてIMSで「CCoE(Cloud Center of Excellence:クラウド活用推進組織)」に属するICTエンジニアサービス部 CCoE担当 シニアスペシャリストの吉田 理見 氏は、「三越伊勢丹グループ内でも、様々なタイプのエンジニアと会話してきました。どこが理解しにくいのか、どうすれば腑に落ちるのかなどを経験していますので、お客さまの状況に応じた対応ができます」と話す(写真3)。
例えば、オンプレミス環境しか使ったことのない人やAmazon EC2環境しか使ったことのない人、コードでのインフラ管理が当たり前の人では、「サーバーとして想起するものに違いがあり、設定の詳細を教える際にはコツがあります」と吉田氏は話す。それだけに「表層的なテクニックではなく、背後で、どのような仕組みが動いているのかをしっかり理解することが大切です。クラウドネイティブの思想や常識を身に着けてもらうことを強く意識しています」(同)という。
ほかにも内製/外製の切り分け方や、開発時のレビューやフィードバックのあり方、アジャイル型と従来型の併存方法など、「経験からたどり着いた数々の方法論を、顧客企業に伴走しながら徐々にトランスファーします」(同)
平山氏は、「小売業のみならず、顧客一人ひとりの満足を追求することが成長の源泉になる業態であれば、IMSのノウハウは必ず役に立つと信じています。DX時代に相応しいスキルセットの補充に悩まれていれば是非、私たちと共に取り組んでいきましょう」と提案する。
併せてIMSでは、顧客満足度を追求したい人材の中途採用も積極的に募集しているという。
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