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  • 目指すべきDXの実現に向けた内製化のススメ

三越伊勢丹システム・ソリューションズ、グループのDX経験活かし“内製化”を支援

DX人材育成に向けDevOps基盤と方法論、実践型スキルを移転

DIGITAL X 編集部
2023年3月31日

デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むに当たり、人材や知見の不足に悩む企業が少なくない。そうした企業の“内製化”支援に乗り出したのが三越伊勢丹システム・ソリューションズ)(IMS)だ。三越伊勢丹グループが進めるDXプロジェクトで体得したスキルや方法論、推進基盤などを共有する。その軸には、技術一辺倒ではなく、「お客さまにとって何がベストか」の考え方がある。

 ネットビジネスの浸透を背景に、多くの企業が、生活者や取引先にとって魅力的なサービスを創造するデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを加速している。そこでは、アイデアを形にし市場に問うまでのスピードを高めるアジャイル(俊敏)さを求め “内製化”へのシフトが優先課題の1つとして浮上している。

 だが問題は、内製化を牽引する人材の確保だ。IT部門は既存案件を多数、抱えて余裕がないだけでなく、アジャイル型アプローチは、ウォーターフォール型アプローチを取ってきたIT部門にとっては経験知が乏しいと言わざるを得ない。即戦力を社外から採用するにしても売り手市場が続いており思惑通りにいかないのが実情だ。

 そうした悩みを抱える企業を対象に、支援策の提供に乗り出したのが三越伊勢丹グループのIT事業会社、三越伊勢丹システム・ソリューションズ(IMS)である。同社ICTアプリケーションサービス部プラットフォーム第4担当長の平山 弘之 氏は、同社支援策の特徴を、こう話す(写真1)。

写真1:ICTアプリケーションサービス部 プラットフォーム第4担当長 平山 弘之 氏

 「三越伊勢丹のDXプロジェクトを通し、IMSはDevOps(開発と運用の統合)やアジャイル開発などに関連する数々の知見を蓄えてきました。それらのスキルやノウハウをDX推進や内製化に悩む企業と一緒にプロジェクトを進めるなかで伝授し、各社が自走によりDXを具現化できるよう支援できます」

レガシーのモダナイゼーションとDevOps基盤の整備を両立

 IMSは、三越と伊勢丹が2008年に経営統合したのを機に、それぞれのシステム子会社を統合して誕生した。以来、グループの主力である百貨店事業をIT施策の面から支えてきた。「老舗百貨店がルーツなため従来は当社にも “レガシー色”が濃く残っていました。ですが、伝統的な日本企業である三越伊勢丹が、時流に沿ったデジタル化を成し遂げるためのシステムの構築に取り組んできたことが我々の自信につながっています」と平山氏は強調する。

 小売業のDXといえば、スマートフォン用アプリケーションを組み入れた顧客向けサービスなどフロントエンド系システムに意識が向きがちだ。三越伊勢丹でも、3D(3次元)計測と店頭接客を組み合わせて靴が選べる「YourFIT365」や、チャットやビデオ通話で接客する「リモートショッピングアプリ」などを開発し提供している。だが平山氏は、「これらのアプリも大半のケースでは、ポイント管理や販売管理などバックエンドの基幹系システムとの連携が不可欠です。そうした連携が簡単にできるよう、既存システムがモダナイズされているかどうかがDXを推進する上で重要なポイントになります」と指摘する。

 実際IMSでは、フロントエンド系と基幹系の連携を図るために、同社が「ビジネスプラットフォーム(BPF)」と呼ぶクラウドベースの仕組みを作り上げた。受注や顧客管理といった汎用的な業務ロジックをマイクロサービスの集合体として実装し、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を使って必要なデータをやり取りできる。「基幹系に大きな手を入れることなくモダナイズに成功できました」(平山氏)という。

 並行してフロントエンド系を迅速に開発するためにDevOps基盤も整備した。平山氏は、「DXに向けた開発スピードが上がらない理由は、開発や運用に携わるチーム間の調整に時間が割かれるからです。インフラ構築や運用作業をすべてツール化し、開発チーム自らが利用するDevOpsの流儀は理にかなっています」と説明する(図1)。従来は、開発チームのほかに、サーバー構築やネットワーク設定などを担うインフラチーム、さらにリリースや監視などを担う運用チームが協働するスタイルを採っていた。

図1:三越伊勢丹システム・ソリューションズがDX推進のために整備したDevOps(開発と運用の融合)基盤と体制

 ツールとしては、IaC(Infrastructure as Code)やコンテナ活用によるインフラ作業、CI/CD(継続的インティグレーション/継続的デリバリー)の流儀に則ったビルド&リリース、オブザーバビリティ(可観測性)を担保する運用監視などを用意している。加えて実際の作業時に参照するための「ガイドライン」も作成。「DevOps基盤を使った自動化とセルフサービス化の効果により、開発スピードは4倍に、保守工数は4分の1になっています」と平山氏は胸を張る(図2)。

図2:三越伊勢丹システム・ソリューションズの開発チームが参照する「DevOpsガイドライン」と、その効果

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