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- DX戦略を実現する顧客接点強化のための自社アプリの開発・運用の基礎
顧客接点となる自社アプリでできることと開発プロセス【第1回】

スマートフォンが普及し、スマホ用アプリケーションはビジネスにも不可欠なツールになりました。すでに多くの企業が、顧客接点の強化や新規事業の創出、業務効率化などを目的に自社アプリを開発・提供しています。今回は自社アプリ入門の第1歩として、企業が自社アプリに期待できる役割と、そのために顧客に向けて提供できる主な機能を紹介します。
今日、スマートフォン用アプリケーションに触れない日はないのではないでしょうか。それほど日常に溶け込むスマホアプリですが、企業が自社アプリを開発・運用する裏側にはもちろん、次のようなビジネス上の狙いがあります。
顧客エンゲージメントの強化 :自社アプリは、顧客との直接的な接点になり、顧客エンゲージメントを深める強力なツールです。ロイヤルティの向上や、CX(Customer Experience:顧客体験)の価値向上などを期待します
販促・マーケティング効果の最大化 :自社アプリは、効果的な販促/マーケティングチャネルとして機能します。顧客の行動履歴や位置情報に基づくダイレクトマーケティングや、精度の高いマーケティング戦略の立案が可能になります。自社アプリがあることによるブランドの認知度向上も期待します。
新規事業/サービスの創出 :自社アプリは、新たなビジネスチャンスを生み出す基盤にもなり得ます。サブスクリプションモデルの導入や、他社と連携したパートナーシップの強化、顧客ニーズの深掘りから潜在的ニーズを発見できれば、新たな事業やサービスのヒントになります。
業務効率化とコスト削減 :自社アプリは、社内業務の効率化やコスト削減につながります。問い合わせなどに対するセルフサービス化を進めればサポート業務の負担軽減になります。申込書や資料などを自社アプリ内で提供すればペーパーレス化を進められます。
これらが示すように、自社アプリの開発・運用は、単なるIT投資ではなく、企業が競争優位性を確立し、持続的な成長を実現するための戦略的な投資だと言えます。自社アプリの提供で成功している企業はいずれも、単に情報を提供するだけでなく、CX価値を高める機能を提供し、顧客接点の継続性を高めロイヤルティを構築しています。
これらのために自社アプリは複数の機能を提供しています。多くの企業が利用している代表的な機能は以下です。
プッシュ通知によるダイレクトな情報発信
顧客のスマートフォンに直接、セール情報やクーポン、新着コンテンツの通知を送れます。メールマガジンと比較して開封率が非常に高く、タイムリーな情報提供により来店や購入を強力に促進します。顧客との継続的な関係を築く上で、最も基本的かつ効果的な機能です。
GPSやカメラなどスマートフォン機能の活用
GPS(全地球測位システム)による最寄り店舗の検索やチェックイン機能、カメラを用いた二次元コード決済、本人確認書類の撮影・提出など、Webサイトだけでは実現できない、より豊かで便利なCXを提供します
会員証・ポイントカード機能
会員証をアプリ化し、顧客のスマートフォン内に常に接点を持つことで、自社ブランドへの親近感を醸成し、継続的な利用を促します。アプリを通じて顧客の属性データ(年齢、性別など)や行動データ(購買履歴、来店頻度、クーポン利用状況など)を収集・分析すれば、効果的なマーケティング施策に活用できます。プラスチック製カードの発行・郵送コストを削減できる点も大きなメリットです。
これらの機能はあくまで一例です。スマホ自体の機能向上や、さまざまな機能のデジタル化に伴い、アプリで提供できるサービスは増えています。自社のビジネスモデルや課題に合わせて、必要な機能を組み合わせ、独自の価値を提供できるのが自社アプリの魅力です。
開発手法にはスクラッチ開発とパッケージ開発がある
自社アプリで実現したいことのイメージが湧いてきたら、次に考えるべきは「どうやって作るか」という開発手法の選択です。開発手法には大きく分けて(1)フルスクラッチ開発と(2)パッケージ開発(ノーコード/ローコード開発を含む)の2つのアプローチがあります。それぞれに一長一短があり、自社の目的や予算、期間に合わせて選ぶことが重要です(表1)。
フルスクラッチ開発は、ゼロからオーダーメイドでアプリを設計・構築する手法です。建築で言えば、土地選びから設計士と相談して建てる注文住宅のようなものです。デザインの細部まで追求し、自社のビジネスモデルに完全に合致した、世界に1つのアプリを作れます。その分、時間とコストはかさみます。独自のビジネスロジックを持つサービスや、大規模なシステム連携が必要な場合の選択肢だと言えます。
一方のパッケージ開発は、あらかじめ用意された機能やテンプレートを組み合わせてアプリを構築する手法です。間取りや設備がある程度決まっている規格住宅やマンションに例えられます。開発コストと期間を大幅に抑えられるのが最大の魅力です。近年は、ノーコード/ローコード開発と呼ばれる、プログラミング知識をほとんど必要としないサービスも増えています。まずは基本的な機能でアプリを導入し、顧客の反応を見たいという場合の選択肢です。
どちらの手法が優れているというわけではありません。「何を目的とし、どれだけのリソースを投下できるのか」を明確にし、自社のフェーズに合った手法を選択することが、プロジェクト成功の第一歩になります。