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  • DX戦略を実現する顧客接点強化のための自社アプリの開発・運用の基礎

顧客価値はアプリリリース後の運用・保守で決まる【第7回】

小地戸 孝介(フェンリル 開発センター 開発2部 課長)
2026年2月25日

攻めの要:利用実態に合わせた継続的な開発

 リリースしたアプリを、利用者が開発者の思い描いた通りに使ってくれるとは限りません。リリース当初から利用者全員を満足させるのも難しいものです。アプリを成長させるための唯一の方法は、実際の利用状況を分析し、利用者の声を反映させるための継続的な開発です。

利用者の声とアジャイル開発

 アプリを成長させるためには、当初の想定にとどまらず、市場の反応に合わせた新機能の追加や改善が必要です。そこで重要になるのが機能改善計画です。例えば「2カ月に1度の軽微な修正に加え、半年に1度の定期的なアップデートを実施する」といったリズムを作ることで、UX(User Experience:利用者体験)を常に新鮮に保てます。そうした開発には、短いサイクルでリリースを繰り返すアジャイル開発手法が適しています。

 持続的な成長にはビジネス戦略の視点も欠かせません。エンジニアやデザイナーだけでなく、マーケティング担当者を含めたチームで解決策を考えるプロセスが重要です。適切なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の設定とデータ分析に基づき、利用者の声を迅速にプロダクトへ還元するサイクルを回し続けることが成功の鍵になります。

開発ベンダーとの継続したコミュニケーション

 アジャイル開発手法を取り入れる際、最も大切なのは発注者と開発ベンダーの密なコミュニケーションです。発注者が主体的に運用・保守にも関わり、積極的に情報を共有することで認識のズレを最小限に抑えられます。

 そうした“前のめりな姿勢”が結果として、利用者への継続的な価値提供に直結します。 アプリをどのように成長させたいかというビジョンを描き、それを形にできる開発パートナーと手を取り合うことが、長期的な成功への近道です。常に理想のアプリ像を語り合い、共に歩む運用・保守体制を築くのです。

専門知識を持つ開発ベンダーとの“二人三脚”が不可欠

 開発ベンダーとの関係性は、アプリをリリースしたあとこそ試されます。単なる発注先ではなく、事業を共に育てるパートナーとしての信頼関係が運用・保守の質を左右します。運用・保守段階でも、最新の技術動向を抑える必要があるからです。

 例えば、OSのメジャーアップデートをはじめとする先行情報は、リリースの数カ月前から開示されるため迅速な情報収集と影響調査が欠かせません。そうした専門性を要する業務を自社のみで対応するには限界があります。外部の専門家と足並みを揃えることで、急速な環境変化に対応でき、ひいてはアプリの競争力を高められます。

 優れた開発ベンダーは、発注者が指示したものを作るだけでなく、リリース後に予想されるトラフィックの急増や機能拡張を見据えた提案をするはずです。そうした開発ベンダーをパートナーに“共に創り上げる”姿勢を持つことが、アプリの安定運用と中長期的なコスト最適化への近道になります。

 自社アプリの成功には、高度な技術力を持つ開発ベンダーの存在は不可欠です。しかし、単に開発・運用力だけでなく、その開発ベンダーが“伴走者”として、どれだけ深く自社の事業を理解し、情熱を持って取り組んでくれるかが重要です。

 的確な設計、高品質なデザイン、そして安定した運用を実現するために、発注者と開発ベンダーの“二人三脚”での歩みが不可欠であり、何より自社アプリを使って提供するサービスへの“情熱”です。本連載が、利用者に愛され続けるアプリの成長につながれば幸いです。

小地戸 孝介(コジト・コウスケ)

フェンリル 開発センター 開発2部 課長。2020年4月にフェンリルに入社し、プロジェクトリーダーに就任。自動車販売会社、塾、建設機械メーカー、保険会社など、多岐にわたるクライアントのWebアプリやネイティブアプリの開発プロジェクトを成功に導く。メガバンクのプロジェクトマネジャーとして組織マネジメントも担当している。関わったプロジェクトでは良好な顧客関係を築いている。