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  • DX戦略を実現する顧客接点強化のための自社アプリの開発・運用の基礎

顧客価値はアプリリリース後の運用・保守で決まる【第7回】

小地戸 孝介(フェンリル 開発センター 開発2部 課長)
2026年2月25日

前回は、テスト工程における発注者の役割について説明しました。険しいテスト工程が終われば、いよいよ自社アプリケーションのリリースです。しかし、ビジネスの観点では、アプリのリリースはゴールではなく、あくまで始まりにすぎません。今回は、リリース後の運用体制について説明します。

 自社アプリケーションの構想を練り始めてからアプリが完成するまでには、企画、開発、テストと長い時間をかけてきました。それだけにアプリを世に送り出す瞬間には、格別な達成感があるでしょう。しかしビジネスの観点では、アプリを利用者が使い始めた瞬間から“真の勝負”が始まります。

 アプリのリリース後に不可欠なのは、利用者にストレスなく使い続けてもらうための安定した運用・保守体制の構築です。どれほど優れた企画やデザインであっても、動作が不安定だったり、対応への遅れがあったりすれば利用者は瞬く間に離れてしまうからです。

 アプリの価値を継続して提供するためには、事前の心構えと緻密な運用設計が欠かせません。リリース後のアプリを成功へと導くための取り組みには“守り”と“攻め”の両面があります(図1)。それぞれについて説明します。

図1:自社アプリケーションの価値を継続して提供するためには“守り”と“攻め”の運用・保守体制が必要になる

守りの要:運用・保守体制の構築

 自社アプリをリリースすると避けて通れないのが運用・保守です。単に、アプリが動作しているかどうかを監視するだけでは不十分です。少なくとも次の2点は欠かせません。

利用者との接点になるサポート窓口の設置

 運用・保守の柱の1つは、ユーザーサポート体制の構築です。アプリの基本操作や会員登録手順、ログインできないときのトラブル対応など、利用者からの問い合わせは多岐にわたります。これらを迅速に解決するためのサポート窓口の設置は顧客満足度の維持に直結します。

 サポート窓口の業務効率を高めるには、FAQ(よくある質問と答)の整備も欠かせません。日々の問い合わせ内容を分析し、FAQを継続的に更新・拡充し利用者自らが課題を解決できるようにすることで、サポートコストの抑制とCX(Customer Experience:顧客体験)の向上を同時に実現します。

アップデートと技術的課題への対応

 運用・保守の、もう1つの柱は技術的なアップデート対応です。スマートフォン用アプリにおいては特に、基本ソフトウェア(OS)であるiOSとAndroidのメジャーアップデートへの追従は避けられません。この対応を怠ると、アプリの最新版を公開できなくなったり、特定の端末では動作しなくなったりするリスクが生じます。

 加えて、アプリが利用しているライブラリの脆弱性対応やセキュリティホールの修正など、予期せぬリスクへの迅速な判断と改修体制も求められます。

 アプリの安定稼働には、これまでの工程同様に、開発ベンダーに任せきりにせず、自らが責任を持って関与する体制が必要です。万が一の際のルールを丁寧に取り決めておくことも欠かせません。時代の変化に寄り添いながら、開発ベンダーと二人三脚で歩める体制を作る。その積み重ねがアプリの息の長い成功につながります。