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- 課題解決のためのデータ活用の始め方
データを可視化してビジネスに活かす「BIツール」【第7回】
BIツールの選定では、いくつかの観点がある
市場には現在、さまざまなBIツールが存在します。BIツールを選定する際は、以下のような観点から検討するとよいでしょう(図3)。
観点1:ほしい数字が“すぐに”取り出せるか
ビジネスの現場では、数字が必要な時に即座に確認できる環境が求められます。ダッシュボード上のKPIは、その作成に多少の時間をかけても構いませんが、個々の施策や商品の効果検証など、アドホックな集計・分析においては即時性が重要です。
そんな時に、情報システム部門や外部ベンダーに依頼しなければ結果が得られないような環境では、意思決定のスピードに支障をきたします。ビジネスサイドのメンバーが自分で数字を確認できる環境を整えられる、そんなツールを選定することが重要です。
観点2:AI技術への対応
近年の生成AI(人工知能)技術の急速な普及は、BIツールの世界にも大きな変化を生んでいます。ベンダー各社は、AI機能の実装を急速に進めています。自然言語で「先月の地域別売上高をグラフにしてほしい」と指示すれば、データを集計・可視化してくれる機能が実用段階に入りつつあります。
AI技術により、求める結果が即時に入手できる世界が近づく中、そうした動きに対応できないBIツールは将来的に生産性の面で遅れを取るリスクがあります。AI機能への対応方針を選定ポイントの1つとして考慮することをお勧めします。
観点3:コスト体系
BIツールの料金体系は製品によって異なります。ユーザー数に応じた課金や、保持するデータ量に応じて変動するなど、さまざまです。例えばユーザー数課金のツールを、参照するだけのメンバーも含めて全社展開しようとすれば費用が大きくなります。利用シーンと利用人数を想定したコストの試算が重要です。
BIツール利用の定着を図るには数字を重視する姿勢が重要
BIツールを選定し導入して、その活用でつまずく代表的なケースは「時間と手間をかけてダッシュボードを構築したものの、結局誰も見ていない」という状態です。この原因の1つは「数字を見ても、どう動けば良いか分からない」という状況にあります。数字の変化とアクションの結びつきをダッシュボードの利用者が理解していなければ、データの活用にはなりません。
対策としては「この数値が、この値(しきい値)を超えたら、このアクションを取る」というアクションプランをあらかじめ定めておくことが有効です。利用者が数字の読み方を理解できるよう、組織内でデータリテラシーを高める取り組みも重要です。
もう1つの対策は、管理職が日常業務の中でデータの裏付けを求めることです。社内での提案や企画に当たり「その根拠になる数字は何か」と常に確認されれば、担当者は自然とダッシュボードを参照するようになります。
データ活用はBIツールを導入するだけでは完結しません。マネジメント層が「数字でファクトを示す」よう求めることで、ダッシュボードが組織に定着し、その先にデータに基づいて方針を決める文化が作られていくのです。
加えて最近は、上述したようにBIツールへのAI技術の導入が進んでいます。これにより、データを扱う専門言語の「SQL」を書けないビジネス部門のメンバーでも、自らデータを分析できる環境が広がると期待されています。
ただし、こうしたAI機能を有効に活用するためには、データエンジニアをはじめとする専門知識を持つ人が、AI技術が扱いやすい形にデータ環境を整備しなければなりません。そこで重要になるのが「セマンティックレイヤー」と呼ばれる中間的な“翻訳”の層です(図4)。技術的なデータ構造をビジネスユーザーでも理解できる用語に変換・定義します。
AI機能がデータの意味を正しく理解し、適切な集計・加工処理を実行するためには、セマンティックレイヤーを用意し、データを定義付け、ビジネス用語との対応関係を整備しておく必要があります。
データ活用の利便性向上がデータ品質の低下につながるリスクも
BIツールはデータ活用の“出口”とも言える重要な役割を担っています。それだけにBIツールを選ぶ際は、機能や価格だけでなく「何のために・誰が・どのように使うか」を明確にした上で、見るべきKPIを設計し、組織全体での定着を見据えた選択が重要です。
AI技術の普及によりビジネスユーザーが自らデータを加工・分析できる範囲が広がっています。そこでは専門知識を持つデータエンジニアがデータ基盤を整備しておくことが、AI機能の効果を高めることにつながります。
こうした状況にあって、新たな課題として浮上しているのが、データ品質の担保です。誰でもデータを扱えるようになることは利便性の向上につながる反面、意図せずデータの品質低下を招くリスクがあるのです。
データ活用に伴う品質低下への対応策として重要性が高まっているのがデータカタログです。次回はデータカタログについて解説します。
若尾 和広(わかお・かずひろ)
primeNumber データイノベーション推進室 室長、プロフェッショナルサービス本部 プリンシパルソリューションアーキテクト。大日本印刷のビッグデータ分析部門立ち上げに参画した後、電通系マーケティング会社(現電通デジタル)にてCRMコンサルタント、BIシステム開発に従事。事業会社を経て、ブレインパッドにてプリンシパルコンサルタントとしてデータ分析やデータ活用基盤の構築、MA導入、分析/DX組織の立ち上げ支援などに従事。現在はprimeNumberのプリンシパルソリューションアーキテクトとしてクライアントのデータ活用を支援するとともに、データイノベーション推進室 室長として生成AI技術を中心としたR&D領域を担当している。


