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  • 課題解決のためのデータ活用の始め方

データを探せる・使える状態に保つ「データカタログ」【第8回】

若尾 和広(primeNumber データイノベーション推進室 室長)
2026年5月20日

データカタログを整備する3つのステップ

 データカタログを整備する手順は大きく次の3つのステップで進めます(図2)。

図2:データカタログを整備するための3つのステップ

ステップ1:ツールを選定する

 データカタログを整備するための適切なシステムを選びます。表計算ソフトウェアでの管理も不可能ではありませんが、上述したように、更新漏れが発生しやすく、組織的な運用には向きません。専用システムの導入を推奨します。

 ツールの選定では「自社のデータが、どのシステムに格納されているか」が重要な基準になります。クラウド上のDWHにデータが格納されているなら、そのDWHに対応したデータカタログを選ぶのが効率的です。「AWS(Amazon Web Services)」や「Microsoft Azure」「Google Cloud」の主要クラウドでは、それぞれがデータカタログ機能「AWS Glue Data Catalog」「Azure Purview」「Data Catalog」を用意しています。

 一方、オンプレミスとクラウドの両方にあるDWHを対象にしたい場合は、複数環境に対応できるツールが必要になります。自社のシステム構成を整理し、対象システムを把握したうえで、それらに対応可能なツールを選定しましょう。クラウドベンダーだけでなく、当社の「COMETA」など、種々のベンダーが、さまざまなデータカタログツールを提供しています。

ステップ2:メタデータを整備する

 ツールを選定しデータソースと接続できたら、メタデータを作成・整備します。最近は多くのツールがAI技術による自動生成機能を持つようになってきています。ただ自動生成は、ある程度の精度でメタデータを自動的に作成してくれますが、あくまで出発点です。社内独自の用語や、組織固有のルールについては人間による確認・補完が不可欠です。

 社内で使われる用語集や、よく使われるレポートのドキュメントなどをシステムに読み込ませれば、より精度の高いメタデータを整備できます。

ステップ3:データガバナンスの方針を定める

 データカタログの整備と並行して「誰にデータカタログを公開するか」というデータガバナンスの方針を検討します。データカタログを整備すると、どこに重要なデータがあるかが一目で分かるようになるだけに、閲覧権限を適切に設計しておかなければなりません。

 データカタログのカバレッジ(対象範囲)は、少なくともDWH上のデータは全て対象にすることが望まれます。一部だけをカタログ化すると「このデータについては分かるが、あのデータについては分からない」という状況が生まれ、データ活用が難しくなります。

データカタログを形骸化させない運用が重要に

 データカタログを整備しても、運用が続かなければ意味がありません。表計算ソフトウェアによる管理と同じく、データカタログが「誰も更新しない資料」になってしまうのが最大のリスクです。

 対策として重要なのは「データソースを改修したら必ずデータカタログに反映する」というルールを開発・運用プロセスに組み込むことです。最近のデータカタログツールでは、AI技術によりデータとカタログの差分を検知し、自動的にカタログに反映する機能も登場しています。こうした仕組みをうまく活用すればメンテナンス負荷を下げられます。

 データカタログは「ツールを入れれば完成」ではなく、継続的に育てていくものです。BIツールでの分析やAIエージェントの活用が進めば進むほど、データカタログの価値も高まります。まずは自社のデータが格納されているシステムを踏まえたデータカタログツールを選定し、なるべく負担を減らしながら運用を続けていきましょう。

若尾 和広(わかお・かずひろ)

primeNumber データイノベーション推進室 室長、プロフェッショナルサービス本部 プリンシパルソリューションアーキテクト。大日本印刷のビッグデータ分析部門立ち上げに参画した後、電通系マーケティング会社(現電通デジタル)にてCRMコンサルタント、BIシステム開発に従事。事業会社を経て、ブレインパッドにてプリンシパルコンサルタントとしてデータ分析やデータ活用基盤の構築、MA導入、分析/DX組織の立ち上げ支援などに従事。現在はprimeNumberのプリンシパルソリューションアーキテクトとしてクライアントのデータ活用を支援するとともに、データイノベーション推進室 室長として生成AI技術を中心としたR&D領域を担当している。