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- 官公庁DXに不可欠な“大手 × スタートアップ”の勧め
なぜ日本の官公庁DXは進まないのか【第1回】
個別最適なシステムが乱立しデータ視点が欠如
これらの官公庁における制度的な特徴はDXに対し、いくつかの影響を与えています。その1つが、個別最適なシステムによるサイロ化です(図2)。基本的に業務部門主導の調達により、全体最適の概念が不足するためで、アプリケーションやデータベース、ネットワークなどが個別の要件のもとに乱立する可能性があります。
ただネットワーク基盤に関しては、統制がなされないと通信やセキュリティに支障をきたす恐れがあるため、情報システム部門の管理のもと、システムごとにネットワークセグメントやIPアドレスが割り当てられます。しかし、その上位レイヤであるデータベースやアプリケーションが個別に開発・実装されることが多いのです。この状況がDXに与える影響には以下のようなことがあります。
影響1:ユーザー認証の非統一
個別に実装されたシステムで統合されないものの1つがユーザー認証です。個別開発のシステムであれば、既存のディレクトリサービス「Active Directory(AD)」の認証機能を使うなどの対応が可能ですが、パッケージソフトウェアなどを導入するとユーザー認証や権限管理がアプリケーション独自の仕組みになることがあります。
影響2:データの不整合
例えば、同じユーザーを表すデータでも「ID」「UserID」など、さまざまなフィールド名がつけられ、かつ採番体系が異なる場合もあります。アプリケーションが使用する、あるいは生成するデータは、そのアプリケーション内でのみ意味を持つものになります。
このような状況下では、個々のアプリケーションは動作しても、DXの観点では大きな問題を引き起こします。DXの特徴の1つは、各業務プロセスを統合し、自動化によるユーザー負荷の軽減やスピードの向上、不正の排除などにあります。システムやファイル間でコピー&ペースト(コピペ)を繰り返す光景は今も多く残っています。しかし、ユーザー認証やデータがつながらないと業務プロセスはつなげず、表面的なデジタル化ができてもコピペをなくせません。
最近では、アプリケーションに蓄積されたデータを分析したり、AI(人工知能)モデルの学習データとして活用し付加価値がより高い業務の実現に取り組んだりする動きが活発です。しかし、データの分断は、こうしたデータ活用にも大きな影響を与えます。システムごとに意味が違うデータの読み替えや変換などに莫大な手間とコストがかかるためです。システム間の連携では、どの部門が責任と費用を持つかも問題になります。
全体最適が図れないのは組織の構造上の問題
個別最適のシステムがDXを阻害していることには気づいている方も多いでしょう。しかしながら、調達の仕組みや組織運営上の理由により、その実現が難しいのも現実です。これは担当者の能力の問題ではなく、組織の構造上の問題です。業務部門が業務単位でシステム調達を続ける限り、そして情報システム部門の役割がネットワークとセキュリティの統制だけに限定されている限り、この状況は続くでしょう。
官公庁の特徴として説明してきた、こうした状況は、民間企業においても同様に起きることが多々あります。年度末の予算消化、業務部門による個別調達、ジョブローテーションという名の定期異動などは心当たりがあるのではないでしょうか。ぜひ一度、各組織で同様のことが起きていないかを振り返ってみることをお勧めします。
次回は、システムのアーキテクチャーの要素であるアプリケーションやデータについて考察します。
𡌶 俊介(はが・しゅんすけ)
ジーグラビティー 取締役COO。SEとしてネットワーク設計やアプリケーション開発に従事した後、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)にてプリセールスとプロダクトマネージャーを経験。その後シトリックス・システムズ・ジャパンにてマーケティングに従事。NTTデータの関連会社ではマーケティング責任者に加え、事業推進と採用を担当。その後大手食品商社にて新規事業の立ち上げと運営をリード。外資系と国内企業、事業会社とベンダー双方の経験と視点を持ち、実効性と継続性のある仕組みづくりを重視した支援に取り組んでいる。中小企業診断士。

