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  • 官公庁DXに不可欠な“大手 × スタートアップ”の勧め

“サイロ化”の解消に向け業務部門がデータ基盤構築を主導せよ【第2回】

𡌶 俊介(ジーグラビティ 取締役COO)
2026年7月27日

前回は、官公庁におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を阻害する構造上の理由を説明しました。業務効率を高めるために業務部門が調達するシステムが結果的にDXを阻害しているという皮肉な結果をもたらしているのは、その予算獲得や組織運営の仕組みによるものであり、決して各担当者の能力によるものではありません。では、この構造が招く最大の問題点は何でしょうか。

 前回、官公庁のDX(デジタルトランスフォーメーション)における構造的な阻害要因が与える影響として個別最適なことを指摘しました。この個別最適によって起こっているのがシステムのサイロ化です。

 そしてサイロ化による最大の問題はデータのサイロ化です。例えば住所ひとつをとっても、順書全体を1つのフィールドに入れるか、都道府県や市町村、番地、建物名などを、それぞれ別のフィールドで扱うかの違いは、単純な集計にすら大きな影響を与えてしまいます。

 データのサイロ化は、DXの推進を阻む最も大きな問題であると筆者は考えています。なぜなら、データがバラバラだと“横連携”による業務プロセス連携にも、“縦統合”によるデータ活用にも大きな弊害をもたらすからです。

“横連携”による業務プロセス連携への影響

 DXの目的の1つに業務プロセスやビジネスの変革があります。それを実現するためにはシステム連携が不可欠です。業務ごとにデータが個別に設計されていると、業務行程における前工程のデータを、そのまま後工程に送っても正しく処理できません。住所の例でも、API(Application Programming Interface)などで技術的には接続できたとしても、データの整合性が取れていなければ連携は完結しません。

“縦統合”によるデータ活用への影響

 業務のデジタル化を進めると、さまざまな業務データやログなどがシステムに蓄積されていきます。それらのデータを分析し業務を改善したり、新たな施策を検討したりというニーズが当然出てきます。

 しかし、データの粒度や意味づけがシステムごとにバラバラでは、このようなデータ活用もままなりません。複数システム間でのマスターデータの整備やコードの統一があって初めて正しい分析ができるのです。

 昨今は、蓄積したデータをAI(人工知能)モデルの学習データとして利用し、組織に最適化したAIモデルを活用したいというニーズが顕在化し、あらゆる組織における重要な経営課題になってきています。これは、業務プロセスや、組織体制、人事戦略など組織運営の根幹にかかわるテーマです。

 そこでは、クラウド上のAIサービスを使用するだけでなく、組織固有の情報に基づいて情報を活用したいというニーズも高まっています。システムごとにデータの粒度や意味などが異なれば、AIモデルの学習効率が落ちるだけでなく、AI技術によって得られる結果の“精度”までが損なわれかねません。

 官公庁などでは特に、機密情報を含めてAI技術を適用したいというニーズがあります。その場合はLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)を搭載したサーバーをオンプレミス環境に配置するとともに、学習データとしての各種情報に加え、各システムが生成したデータを活用するだけに精度の低下は大きな問題なのです。

サイロ化は業務視点の“上からアプローチ”で起こる

 データのサイロ化が起きる原因としては、業務部門主導による“上からアプローチ”によるものが大きいと感じています。そこに第1回で説明した単年度予算や入札制度、人事異動といった課題と重なることで、構造的な阻害要因は、より強固になっていくのです。

 残念ながら、これは必然でもあります。なぜなら、業務アプリケーションの導入ニーズが情報システム部門ではなく、常に業務部門から出てくるからです。情報システム部門としても、これから出てくるであろう業務アプリの全てのニーズを予測し、ネットワーク環境やデータ基盤を事前に整備しておくことは非現実的です。結果、データは個別アプリンの実装に必要な内部的コンポーネントに位置付けられ、アプリとセットで設計・実装され続けてしまうのです。

 さらに官公庁にあっては、各アプリの提供ベンダーは入札によって決まるため、アプリごとにベンダーが異なるという状況も発生します(図1)。公平性や透明性の観点では合理的であっても、DXの観点では不都合な状況が起こりやすくなります。

図1:業務ありきの“上からアプローチ”が調達単位をベンダー別にし“サイロ化”を生む

 もちろん、どうしてもアプリを連携しなければ成立しないようなケースでは、ベンダー間で調整し、認識合わせから設計情報の共有、開発、テストなどを実行することになります。ですが、必ずしもコミュニケーションが円滑にいくとは限らず、大きな手間や時間がかかる上に、表面的かつ最低限の連携にとどまるケースも少なくありません。

 こうしたことが膨大な数のアプリ間で実施されれば、業務アプリによるデジタル化が進めば進むほどDXからは遠ざかっていくという皮肉な結果を招くのです。