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- 官公庁DXに不可欠な“大手 × スタートアップ”の勧め
なぜ大手ITベンダーだけでは官公庁DXは進まないのか【第3回】
変革領域では大手の見積もりとスピード感が課題に
以上のような理由から、アプリケーション領域ではスピードが求められます。それだけに、これを大手ITンダーが担うには課題があるのです。
課題1:見積り
前述した通り、アプリケーション領域の調達仕様書は抽象性が高く、提供する側から見るとリスクでしかありません。そのため、不明確な部分全てにリスクを見込み、結果として非常に高額な見積りになるのです。
課題2:スピード感
大手ITベンダーはアプリケーション開発において、要件定義を行い、それを基に開発工数を算出し、体制を整えて開発に入ります。昨今はアジャイル開発にも対応しているものの、一定の条件下で採用されるのが通常です。官公庁のような請負型の役務契約にあっては、民間企業のような柔軟の予算措置は難しいため、柔軟な対応にも限度があります。
これらの課題がある中で、大手ITベンダーがリスクを取り、迅速な意思決定も含めたアジャイル開発を進めるにはハードルが高く、現場が機動的に動くことが難しい状況になります。それだけにアプリケーション開発においては、スタートアップや中小ITベンダーが持つスピード感と、一定のリスクを受容するスタンスが適合するのです。
またアプリケーションの仕様を決めるには、業務を担当している利用部門にヒアリングする必要があります。しかしながら、上述したように、職員は定期的に異動するため、必ずしも担当業務に精通しているわけではありません。引き継ぎを受けた通りに業務を遂行しているというケースも少なくないのです。
多くの職員はITに詳しいわけでもないため、開発要件という観点で仕様をまとめるのも難しい場合があります。多くの省庁は全国に地方局を持ち、地域ごとにローカルルールが存在することもあります。
これらの理由により、最初から要件をきっちりと定義し、設計・開発を進めるというアプローチとは非常に相性が悪いのです。
アプリ開発にはスタートアップの“柔軟性”が生きる
では、どのようなアプローチが向いているのでしょうか。それは高速なプロトタイピングとアジャイル開発です。机上で要件を詰めるのではなく、まずは動くものを作ってみて、それを元に要件を決めてゆくという方法が最も効率的で、かつ実際に使えるアプリケーションを作る近道です(図2)。
プロトタイプを元に意見を交換し、高速に修正とフィードバックを繰り返すことで完成に向かっていく。これはスタートアップや中小ITベンダーのほうが得意とするアプローチであり“柔軟性”を最大限に発揮できるのです。
官公庁のDXを進めるための1つの解として、大規模システムの知見や経験が求められる基盤は大手ITベンダーが、スピード感と柔軟性が求められるアプリケーション開発はスタートアップや中小ITベンダーが、それぞれ担当するという組み合わせに合理性がありそうです。
では、この組み合わせで、どのような体制を構築すれば良いのでしょうか。それぞれの強みを持ち寄り、基盤とアプリケーションを構築すれば、スピード感を持ちながら安定した仕組みを作れそうです。しかし、実際には、そう簡単にはいきません。
次回は、大手ITベンダーとスタートアップの連携について考察します。
𡌶 俊介(はが・しゅんすけ)
ジーグラビティ 取締役COO。SEとしてネットワーク設計やアプリケーション開発に従事した後、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)にてプリセールスとプロダクトマネージャーを経験。その後シトリックス・システムズ・ジャパンにてマーケティングに従事。NTTデータの関連会社ではマーケティング責任者に加え、事業推進と採用を担当。その後大手食品商社にて新規事業の立ち上げと運営をリード。外資系と国内企業、事業会社とベンダー双方の経験と視点を持ち、実効性と継続性のある仕組みづくりを重視した支援に取り組んでいる。中小企業診断士。

