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- 官公庁DXに不可欠な“大手 × スタートアップ”の勧め
なぜ“大手×スタートアップ”はうまくいかないのか【第4回】
違い4:リスク許容度
柔軟性の違いはリスクの許容度の違いからくる場合もあります。大手ITベンダーのほとんどは上場企業です。コンプライアンスを重視するあまり柔軟性が低くなることがあります。特に官公庁の契約では遵守すべき法令があります。いくつかの官公庁では情報管理などに関する厳格なルールを定めている場合もあります。
もちろんコンプライアンスは重視しなければなりません。しかしながら、過度な意識は場合によってはビジネス上のよい結果を生まないことがあります。例えば、仕様書には明記されていない重要要件に対応することを“リスク”と捉えると、最終的に業務で使用できないシステムだけが残ることになります。
筆者自身、官公庁の顧客より「使えないシステム」の話を聞くことがあります。それは恐らく、このような経緯で生まれるのではないでしょうか。大手ほどリスクを許容しない傾向があるため、契約自体をあきらめるケースもあります。
一方でスタートアップは、契約書や仕様書の内容よりも現実の課題を重視する傾向にあります。なぜなら、大手ITベンダーに比べると事業基盤が盤石ではないため、結果を出すことにこだわります。結果を出し顧客の評価を得られなければ、次の仕事がなくなるからです。大手ITベンダーとスタートアップでは「成果」の定義や認識が異なります(図2)。その結果、リスクの捉え方も違ってくるのです。
違い5:コスト構造
一般論として、大企業ではスタートアップにはない間接費がかかっています。例えば、多くの従業員のためのオフィスや福利厚生、上場企業であるためのガバナンスやコンプライアンスを維持するための部門などの費用です。
そのため、大手ITベンダーは、それぞれのプロジェクトで必要とされる利益水準(売上総利益)が高く設定され、利益を圧迫するような変更には対応が難しいだけでなく、見積り額もスタートアップより高くなる傾向があります。スタートアップから見れば「なぜ、そんなに費用がかかるのか」という状況ですが、大手ITベンダーが死守しなければならないラインが高いのです。
これに対しスタートアップでは、賃金や福利厚生の水準が低く抑えられているほか、シェアオフィスを利用するなどで固定費を抑えている企業が多くあります。プロジェクトの利益でカバーすべき販売管理費が比較的小さいため、ある程度柔軟に対応できることが多いのです。
“良い悪い”ではなく“当然”と考える前提が異なる
「大手ITベンダーとスタートアップの協業はなぜうまくいかないか」というテーマを考えるために今回は、それぞれが持つ特性について整理しました。もちろん、その内容が全てのベンダーに当てはまるわけではなく、一般的な傾向ではあります。どちらが“良い悪い”ではなく、それぞれ事業上の特性や目指すものが違うため、互いが“当然”と考える前提がそもそも異なるのです。
次回は、これらの違いを踏まえたうえで、どのように協業をしていけばいいのかについて具体的に考察したいと思います。
𡌶 俊介(はが・しゅんすけ)
ジーグラビティ 取締役COO。SEとしてネットワーク設計やアプリケーション開発に従事した後、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)にてプリセールスとプロダクトマネージャーを経験。その後シトリックス・システムズ・ジャパンにてマーケティングに従事。NTTデータの関連会社ではマーケティング責任者に加え、事業推進と採用を担当。その後大手食品商社にて新規事業の立ち上げと運営をリード。外資系と国内企業、事業会社とベンダー双方の経験と視点を持ち、実効性と継続性のある仕組みづくりを重視した支援に取り組んでいる。中小企業診断士。

