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- 官公庁DXに不可欠な“大手 × スタートアップ”の勧め
大手ITベンダーとスタートアップがうまく協業するには【第5回】

第4回では、官公庁システムの構築実績がある大手ITベンダーと、スピード感をもって構築に当たれるスタートアップが、それぞれの特性を生かす形での協業が難しい理由について、両者の特性の違いや構造的な課題も含めて整理しました。せっかく両者が協業できれば、うまくいく可能性があるのに、それは叶わないことなのでしょうか。
大手ITベンダーとスタートアップが効率良く協業し、官公庁のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためには、どのような取り組みをすればよいのでしょうか。そこには次の2つの観点が考えられます。
観点1 :役割分担をしやすい調達とシステム設計
観点2 :大手ITベンダーとスタートアップの関わり方
今回は、まず観点1の調達とシステム設計について考えたいと思います。
得意領域を受け持つための4つのシステム的アプローチ
そもそもですが、官公庁におけるDXの目的は何でしょうか。それは行政サービスの持続性を維持するために業務を再設計することだと筆者は考えます。その実現に向けてデジタル技術やデータをフルに活用するのです。
この視点に立てば、システム基盤として整備しなければいけないレイヤーと、業務に合わせて作らなければいけないアプリケーションレイヤーの境界線が明確になるはずです。その境界に応じて大手ITベンダーとスタートアップが、それぞれが得意とする領域を受け持つことがDX実現への道になるでしょう。
しかしながら、これまで見てきたように、官公庁における入札制度や組織運営といった構造的な理由により、その実現は極めて難しいのが実状です。構造的な課題は、すぐには解決できないとすれば、システム的な側面からは次の4つのアプローチが考えられます。
アプローチ1:全体アーキテクチャーの設計だけをまず調達する
第1回でも述べたように、システム調達は基本的に業務観点で実施されるため、垂直統合によるサイロ化を起こしやすい構造になっています。調達対象がアプリケーションであっても、調達仕様書に、そのアプリケーションに関連するデータベースやインフラがセットで記載されることもあります。
そのインフラに関しても「XXシステム上で動作すること」のように記載されていても、指定されているのはネットワークや基本ソフトウェア(OS)レベルまでで、データベースなどはアプリケーションの仕様に従って設計・構築されることが多くなります。アプリケーションの調達にインフラ要素が入っているため、スタートアップの特性を生かしづらくなってしまうのです。
これを避けるためには、全体アーキテクチャーを設計するフェーズを入れ、それに特化した調達を実施する必要があります。しかし1つ問題があります。このようなフェーズは本来、大手ITベンダーの知見が生かされる領域ですが、このフェーズを特定ベンダーが担当すると、どうしても自社に有利な設計を行う傾向があることです。中立性の観点からは問題ですが、営利企業である大手ITベンダーにすれば当然のふるまいともいえます。
そのため、全体アーキテクチャーの設計は、中立性の高いコンサルティング会社などが、官公庁の担当者や各ベンダーと調整しながら担うのが現実的ではないかと考えます。ただ、実際の構築や運用経験が乏しいコンサルティング会社が担当すれば、実運用上問題が起こるような設計をしてしまうことがあります。経験者を採用するか、実際に構築・運用を担当する可能性があるITベンダーと協業する必要があるでしょう。
アプローチ2:システム基盤の範囲を明確にする
システム基盤をどう考えるかは、現在の課題を解決するためには最も重要なポイントです。なぜなら、システム基盤を先に定義し実装しておかなければ、効率的でDXに寄与するアプリケーションは作れないからです。では、システム基盤とは、どの範囲を指すのでしょうか。
システム基盤には多くの要素が組み合わされています。例えば以下のような要素です。
・ネットワーク/通信環境
・セキュリティ対策
・サーバー/クラウド
・OS
・認証・認可
・ミドルウェア/データベース
・アプリケーション開発環境
・アプリケーション(開発)
・運用監視・ログ
この中で、どこまでがシステム基盤の範囲なのでしょうか。前回までに、大手ITベンダーとスタートアップの特性を分ける軸は要求される“スピード感”だと論じてきました。この観点で線引きすれば、アプリケーション開発だけを切り離し、それ以外の要素は極力システム基盤として定義するのが合理的でしょう。そうすればスタートアップはアプリケーション開発だけに専念でき、スピード感のある開発を実現できるでしょう(図1)。
もちろんシステム基盤についても、業務の変革スピードに対応できるよう、これまで以上にスピード感が求められるでしょう。
