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- 官公庁DXに不可欠な“大手 × スタートアップ”の勧め
なぜ“大手×スタートアップ”はうまくいかないのか【第4回】

前回、官公庁のシステム構築には、実績がある大手ITベンダーが担うべき領域と、スタートアップの特性が生かされる領域があることを説明しました。では、それぞれの長所を生かして協業すれば官公庁DX(デジタルトランスフォーメーション)は進んでいくのでしょうか。しかし実際は、大手ITベンダーとスタートアップの協業はうまくいってはいません。両者の間には、組織的な観点も含め、より広い範囲で違いがあるからです。
大規模システムの設計や運用に実績がある大手ITベンダー。柔軟でスピード感があるスタートアップ。両者が協業していくには、それぞれの違いをより広い範囲で理解する必要があります。
大手ITベンダーとスタートアップの5つの違い
筆者はこれまで、日本の大企業グループ会社、外資系企業、スタートアップなどでキャリアを積んできました。それぞれでの経験を踏まえ、両者の違いをまとめてみます。
違い1:スピード
大手ITベンダーとスタートアップを比べると、よく“スピード感の違い”が語られます。では、ここでの「スピード」とは何かといえば、それは「意思決定のスピード」だと断言できます。両者の間で、設計や開発、構築などの作業スピード自体が極端に変わることはないのではないでしょうか。
入札からプロジェクトの推進、調達、実施、納品の全てのプロセスは意思決定の連続です。大手ITベンダーでは、PM(Project Manager)が持つ権限を超える意思決定が必要になれば、その都度説明し、稟議を上げ、承認を得るプロセスが発生します。そのため、迅速な意思決定は非常に難しくなります(図1)。
一方、スタートアップでは、重要なプロジェクトになるほど社長や役員などの経営陣が直接、プロジェクトに関与することが多くなります。そのため、状況の変化などに応じて会社としての意思決定がその場で下されます。直接関与していなくても、社長などに判断を仰ぐのは、それほど難しいことではないでしょう。
このように、スタートアップが「すぐに決めて動けばいい」と思うことが、大手ITベンダーとの協業時には意思決定のスピード感が合わず、機会を逃すと感じることになります。同時にスタートアップには「なぜそのようなことが起きるのか」が理解できません。
違い2:プロジェクト品質
一般に「スピード」と「品質」は反比例すると考えられています。時間をかけることでテストや確認を入念に行え、システムや文書といった成果物の品質は高まるとされています。そのため、大手ITベンダーから見ると、スピード感のあるスタートアップの品質には懸念を抱くことがあります。
実際、個人的な経験でも、スタートアップは“攻め”に強いため、例えばアプリケーションなどをどんどん作っていくことには長けています。一方で“守り”ともいえる品質の作りこみは後回しになりがちで、大手ITベンダーが不安を感じることはあるでしょう。逆にスタートアップによっては、これまでの経験では許容されたことが官公庁や大企業では許容されず戸惑うことがあります。
違い3:柔軟性
スピードの違いと似ているのが柔軟性の違いです。官公庁のDXプロジェクトは、要件がしっかり決まっていて、それに沿って粛々と進めればよいという印象があるかもしれません。実際、官公庁の調達では、入札のための公示と仕様書が提供されます。
しかし、この段階で提供される仕様書の記載内容は、システムエンジニアなどがイメージするシステム仕様書とは大きく異なります。システムの概要や目的、条件などが記載されていますが、抽象的に書かれている部分も多く、そのままではシステムを構築できないことが多いのが実情です。
そのため、受注後に実質的な要件定義を実施することも少なくありません。そこでは、受注前の想定と、プロジェクト開始後の前提が異なることもあり「どこまで柔軟に対応するのか」がプロジェクト成功のための重要な要素になります。「仕様書に書かれていないのでやらない」と「仕様書に書かれていないけどやる(もちろん限度はあります)」では大きな違いです。
特にアプリケーション領域では、プロジェクト開始後に要件が追加されることも多く、柔軟性が試されます。大手ITベンダーは保守的な対応をすることが多く、スタートアップは顧客のニーズに寄り添いすぎる傾向があります。
