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  • CLOが進めるAI時代のシン・物流

改正物流効率化法が求めるCLOの役割【第1回】

鈴木 邦成(日本大学特任教授、日本SCM協会代表理事)
2026年10月15日

物流効率化の着眼点は第一種荷主と第二種荷主で異なり得る

 物流効率化法は荷主を「第一種荷主」と「第二種荷主」に分けています。

第一種荷主 :自らの事業に関し、継続して、貨物自動車運送事業者または貨物利用運送事業者に貨物自動車を用いる運送を行わせる契約を結ぶ者です。実務上は主に発荷主と説明されますが、引取物流では着荷主が該当する場合があります。この類型では、出荷計画、輸送手段、積載効率、輸送頻度、リードタイムなどに大きく関わります。
第二種荷主 :自らの事業に関し、継続して、他者に雇用された運転者から貨物を受け取り、または、その運転者に貨物を引き渡す者(他の者に行わせる場合を含む)です。実務上は主に着荷主と説明されますが、引取物流では発荷主が該当する場合があります。この類型では、納品時間、荷受け体制、バース運用、検品方法、荷待ち時間、荷役等時間などに関わります。

 両者の違いは、物流効率化の着眼点を考えるうえで重要です。CLOの法定業務は両類型で共通ですが、第一種荷主では、輸送の出し方が検討テーマになります。共同物流、モーダルシフト、出荷平準化、配送頻度の見直し、積載率の改善などが主なテーマです。

 それに対して第二種荷主では、受け取り方が検討テーマになります。バース予約、荷待ち時間短縮、検品作業の効率化、納品条件の見直し、構内作業の平準化などが重要になります。

共同物流・モーダルシフトで問われる第一種荷主の実務上の着眼点

 第一種荷主にとって、共同物流はAI技術活用の分かりやすい領域の1つでしょう。共同物流では、複数企業の貨物を組み合わせ、車両の積載率を高めたり、空車回送を減らしたりします。近年は、共同物流の相手先をAI技術で探索する取り組みも出ています。

 例えば長瀬産業は、化学品物流においてAI技術を用いた共同物流マッチングサービスを展開しています(2024年12月24日発表)。対象となる貨物、発着地、輸送条件などをもとに、共同輸送の可能性を検討します。同社は、複数企業の輸送経路をデータベース化し、そのデータをAI技術で分析して共同物流の候補を探索します。

 ただし、AI技術が候補を示しても、それだけで共同物流が実現するわけではありません。出荷日や出荷単位、納品リードタイム、化学品ごとの取り扱い条件、荷姿、納品先での受け入れ条件などが合わなければ、共同輸送は成立しません。顧客との納品条件を変える必要がある場合もあります。

 従って筆者は、特定第一種荷主のCLOには、AI技術が示した共同物流候補を、営業、製造、在庫管理、物流事業者、取引先との具体的な調整に接続する役割が期待されると考えます。

 モーダルシフトも同様です。国の『物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン』でも、トラック輸送だけに依存せず、鉄道や船舶の活用を進めることは物流の適正化・生産性向上の重要な方向として示されています。

 データと制約条件を整備すれば、輸送距離や荷量、リードタイム、出荷頻度、CO2排出量などをもとに、鉄道や船舶への切り替え余地がある区間を分析できます。実用性は、対象システムと導入事例を示して評価する必要があります。

 しかしモーダルシフトには、リードタイムの見直し、発注締め時間の変更、在庫水準の調整、輸送障害時の代替手段、積み替え作業の設計などが伴います。物流部門だけで決められる範囲を超えることが少なくありません。そこにCLOが機能すれば、AI技術が示した候補を事業上受け入れ可能な変更案としてまとめられると考えます。

 特定第一種荷主のCLOは「どこに改善余地があるか」を見つけるだけでなく「どの条件を変えれば実行できるか」を考える必要があるでしょう。共同物流やモーダルシフトは、物流の最適化にとどまらず、販売条件、在庫政策、生産計画の見直しにも関わります。その意味で、CLOはAI技術と現場、さらに社内外の意思決定をつなぐ“要”の役割を担うと筆者は考えます。

バース予約・荷待ち時間短縮で問われる第二種荷主の実務上の着眼点

 第二種荷主にとって重要なテーマは、荷待ち時間と荷役等時間の削減です。トラックが到着してから受付、接車、荷降ろし、検品、退場までに長い時間がかかれば、ドライバーの拘束時間が増え、輸送効率も低下します。着荷主側の納品ルールやバース運用は、物流全体の効率に大きく影響します。

 荷待ち時間短縮の代表的なデジタル施策がバース予約システムです。納品車両の到着時刻を事前に予約し、バースの混雑を平準化し、荷待ち時間の短縮に活用します。

 AI技術は、バース予約の運用をさらに高度化できます。製品によっては、運用データなどを用いて混雑傾向を分析します。予約枠を固定的に設定するのではなく、作業能力や荷量に応じて調整することも考えられます。遅延の発生傾向を把握し、予約ルールや受付方法の見直しにつなげることもできます。

 映像とAI技術を使って、荷待ち・荷役等時間を把握する実証も進んでいます。映像をAI技術で分析することで、車両の入退場やバースの使用状況、作業時間を把握できれば、現場の実態をより客観的に捉えられます。

 例えば大和ハウス工業とキヤノンマーケティングジャパンは、物流施設における荷待ち・荷役作業時間等の削減に向けた実証実験の結果を2025年2月21日に公開しています。それによれば、車両動作の捕捉精度は各90%前後でした。今も精度向上などの検証が続けられています。

 ただし第二種荷主でも、AI技術による可視化だけでは改善は進みません。荷待ちが長い時間帯が明らかになっても、納品予約のルールを変えなければ改善は限定的だからです。さらに、検品方法や伝票処理、事前データ連携を見直さなければ、荷役等時間は短くなりません。荷待ち時間の短縮には納品事業者との調整や、社内の作業者の配置変更なども必要なのです。

 特定第二種荷主のCLOは、荷受け現場のデータを基に、受付や検品、作業者配置、バース運用、納品ルールの見直しに向けた関係者調整を統括します。AI技術で現場を可視化し、問題の所在を明らかにしたうえで、社内の関係部門と物流事業者、納品事業者を巻き込んで実行策に落とし込む必要があります。

CLOを法対応で終わらせないかどうかで将来が変わる

 本稿ででいう「シン・物流」とは、物流現場にデジタル技術を導入し、その物流データを基に業務ルールや取引先との関係、物流事業者との連携を見直していくことです。

 もちろんAI技術は、CLOが担う物流課題の全てを自動的に解決するものではありません。AI技術の役割は、需要や出荷の波動を予測し、共同物流の候補を示し、モーダルシフトの候補分析を支援し、バース混雑や荷待ち時間を可視化し、改善の優先順位を考える条件を提案することになるでしょう。そのとき、CLOはAI導入を個別改善で終わらせないための組織上の受け皿になり得るでしょう。

 CLOの導入を法対応だけで終わらせる企業と、AI技術の導入を通じて物流の意思決定を見直す企業では、今後の差が開きやすいでしょう。言い換えれば「技術の成熟度を見極め、自社の業務ルールと取引先との連携に結びつけること」がCLOによるシン・物流への移行を左右する重要なカギになるのです。

鈴木 邦成(すずき・くにのり)

日本大学特任教授。博士(工学)(日本大学)。早稲田大学大学院修士課程修了。日本ロジスティクスシステム学会理事、日本SCM協会代表理事、日本物流不動産学研究所アカデミックチェア。ユーピーアールの社外監査役も務める。専門は、物流・ロジスティクス工学。主な著書に『トコトンやさしい物流の本 第2版』『トコトンやさしいSCMの本 第4版』(いずれも日刊工業新聞社)、『図解即戦力 物流の実務と知識がこれ1冊でしっかりわかる本』(技術評論社)などが、共著に『物流DXネットワーク』(NTT出版)、『シン・物流革命』(幻冬舎)、『シン・物流』(インプレス)などがある。

参考資料 (参照日:2026年9月27日)

1. 物資の流通の効率化に関する法律(平成17年法律第85号)第30条、第45条〜第48条(e-Gov) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000085

2. 物資の流通の効率化に関する法律施行令 第6条・第7条(e-Gov) https://laws.e-gov.go.jp/law/417CO0000000298

3. 物資の流通の効率化に関する法律の規定に基づく荷主に係る届出等に関する命令 第2条、第7条〜第10条(e-Gov、2025年8月29日公布、2026年4月1日施行) https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/507M60001FCA010

4. 荷主の判断基準(e-Gov、2025年2月18日公布)https://laws.e-gov.go.jp/law/507M60001FCA001

5. 国土交通省「第一種荷主(主に発荷主)、第二種荷主(主に着荷主)とは」 https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/sippers/about/

6. 国土交通省「物流統括管理者(CLO)の選任」 https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/clo/

7. 長瀬産業「化学品 AI 共同物流マッチングサービス 社会実装を実現」(2024年12月24日)https://www.nagase.co.jp/sustainability/sustainability-news/20241224_SB_01/

8. 大和ハウス工業「荷待ち・荷役作業時間等の削減に向けて、映像とAIを活用した実証実験の結果をレポート」(2025年2月21日) https://www.daiwahouse.co.jp/business/logistics/dplletter/column/022.html

9. 経済産業省・農林水産省・国土交通省「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」(2023年6月2日) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001612797.pdf