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- CLOが進めるAI時代のシン・物流
改正物流効率化法が求めるCLOの役割【第1回】

2026年4月1日以降、指定を受けた特定荷主に対し「物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)」の選任が求められるようになりました。企業が物流を「どのように設計し、どのようにデータやAI(人工知能)技術を使って改善していくか」を問う重要な制度と言えるでしょう。本連載では、AI技術やデジタル技術の活用を前提にした、これからの物流を「シン・物流」として捉え直していきます。今回は、国の制度としてのCLOの位置付けを確認したうえで、AI技術の導入や物流改革におけるCLOの意味を考えます。
物流効率化法(正式名称は「物資の流通の効率化に関する法律」)は、前年度の取扱貨物重量が9万トン以上で、荷主事業の所管大臣の指定を受けた特定荷主指定に「物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)」の選任を求めています。
CLOは、企業が任意に名乗る肩書としてではなく、法令に基づき選任される者です。特定荷主が提出する中長期計画や定期報告の作成事務や、社内の関係部門との連携、物流事業者や取引先との調整、情報処理システムなどに関する計画の作成・実施・評価などを統括管理するのが役割です(図1)。
物流を中心に広範な領域を統括
制度上、CLOには、役職名を問わず、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者を充てることが義務付けられています。CLOには、物流の現場管理者を1人増やすといったことではなく、物流改善をサプライチェーン全体にまで広げ推進するための管理機能を担うことが求められます。この点を取り違えると、CLOは形式的な法対応にとどまってしまいます。
例えば、発荷主が共同物流に取り組む場合、物流部門だけでは配送条件を変えられません。営業部門が顧客との納品条件を見直し、製造部門が出荷計画を調整し、在庫管理部門が安全在庫の考え方を整理しなければなりません。着荷主が荷待ち時間を減らす場合は、倉庫や店舗の受付方法、検品のやり方、納品予約の運用、作業者配置を変える必要があります。
こうした部門横断の変更をCLOは、物流課題としてではなく、経営管理上の課題として扱います。物流の効率化は、現場の努力だけでは限界があります。実践的で効果的な改善に向けては、発注方法や販売計画、在庫政策、納品条件、取引先との契約条件に踏み込むことが条件になります。
この前提に立つと、CLOはAI技術やデジタル技術を活用する「シン・物流」にとってプラスになるのでしょうか。結論からいえばプラスになり得ます。ただし、それは役職名を新設しただけで生まれる効果ではありません。AI技術やデジタル技術が示す改善余地を、社内外の意思決定や、業務ルール、契約条件、現場運用の変更に結び付けられることが条件です。
物流・ロジスティクス領域では、AI技術の商用・運用例が増えてきました。需要予測や出荷波動の予測、積載率の改善、共同物流のマッチング、モーダルシフト候補の抽出、バース予約、荷待ち時間の可視化、映像解析による荷役作業の把握などです。
しかし、AI技術を使えば物流が無条件で最適化されるわけではありません。AIシステムが「この区間は共同輸送に向く」「この時間帯は入荷が集中する」「この便は鉄道や船舶への切り替え余地がある」と示しても、出荷の締め時間や納品リードタイム、在庫水準、検品ルール、予約ルール、取引先とのデータ連携が変わらなければ、改善は限定的になります。
CLOはAIが導き出した改善案の実行条件を調整する
CLOの役割をAI技術導入の文脈で見るとき注意すべき点があります。それは「法令はAIツールの選定責任者を定めていない」ということです。
物流現場へのAI技術の導入では、実証実験までは進むものの全社展開に至らないことがあります。「共同物流の候補は見つかったが、取引先との条件調整が進まない」「バース予約を導入したが、拠点ごとに運用がばらばらで比較できない」「荷待ち時間を可視化したが、納品ルールや検品ルールの見直しに踏み込めない」などです。こうした壁は、技術・運用・組織の問題だといえます。
例えば発荷主は、AI技術が示す共同物流やモーダルシフトの候補を、輸送契約や出荷計画、顧客との納品条件の見直しにつなげなければなりません。着荷主では、AI技術で可視化した荷待ち・荷役時間を、受付、検品、作業者配置、納品ルールの見直しにつなげる必要があります。どちらの場合も、AI技術が示す最適解は、現場だけでは実行できないことが多いのです。
そのためCLOには、物流KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を経営管理の言葉に“翻訳”する役割も期待されます。法令は一律には定めてはいないものの、積載率や荷待ち時間、バース稼働率、CO2排出量などを、物流部門だけで扱わず、営業条件や店舗運営、商品設計、取引先関係などに影響する指標であることを認識し、全社レベルで情報共有する必要があるのです。
そのうえでCLOは、これらの指標を基に「どの改善を優先し、どの部門に協力を求め、どの取引先と調整するか」を検討することになります(図2)。
AI技術の導入で最初に問われるのは、AI技術が導き出した答えを「誰が社内で受け止め、誰が部門間を調整し、誰が取引先や物流事業者と実行条件を詰めるのか」です。CLOの本質的な役割は、AI技術を導入することではなく、AI技術が明らかにした改善策を実行に移すために、関係者間の調整を統括することだと考るべきでしょう。

