- Interview
- 製造
グローバル市場で勝ち抜くために国内事業体質をデジタル化で抜本的に変える
日本製鉄 執行役員 デジタル改革推進部長・情報システム部長 星野 毅夫 氏
- 提供:
- 日鉄ソリューションズ
NSSOLはDX推進のパートナーだが想定超える提案にも期待
――日本製鉄が求める仕組みの巨大さに対しデジタル改革推進部は数十人規模だ。どのように推進力・実行力を確保するのか。
幸い当社には、グループ企業の日鉄ソリューションズ(NSSOL)がおり、彼らとチームを組んで取り組んでいます。普段から製鉄所のシステムや営業システムのメンテナンスなども依頼しており、NSSOLは当社の隅々までを知る存在です。
ただ無条件にNSSOLに依頼しているわけではありません。例えば先に紹介したNS-Libの構築では、複数社からの提案を比較検討したうえで、最も優れた提案と判断した結果として、NSSOLを選びました。もちろん、普段から当社の依頼への回答の質も高く“ハウスドクター”として評価していますし、研究機能を持つ「システム研究開発センター」も非常に頼りがいがあります。
製鉄業以外の産業への知見が豊富なことも魅力です。当社メンバーは製鉄業に関しては良く知っていますが、他業界の取り組みには、なかなか触れる機会がないためです。先般もスマートフォン用アプリケーションの開発時にNSSOLのメンバーに協力を仰いだところ、アジャイル開発手法によって画面開発などがあっという間に完了しました。長年、ウォーターフォール開発で来た我々からすれば新鮮な驚きでした。
我々に乏しい能力を備えたパートナーが側にいるメリットは非常に大きいものです。ただNSSOLには苦言もあります。当社の依頼を完璧に遂行するだけでなく、もう一歩踏み込んだコンサルティング的な提案を是非とも寄せてほしいという点です。提案にはもっと貪欲であって良いはずです。
コンサルティング会社は非常に押しが強く、当社ニーズを一所懸命に探ってくれます。提案の糸口をつかめば猛烈に売り込んでもきます。そうしなければ生き残れない面もあるでしょうが、そこには学ぶ点もあるはずです。NSSOLは製鉄業以外にも広範な経験・ノウハウを持っており、我々が思いつかない提案ができるはずです。
私は2025年4月から、そのNSSOLに移ることになりました。これまでのユーザーとしての経験や視点を活かし、当社からの“苦言”を跳ね返していくことがミッションだと理解しています。今後は逆の立場から、日本製鉄とNSSOLのチームワークを強めていきたいと思います。
プロジェクト遂行能力確保と生成AIによるデータの標準化に取り組む
――日鉄DXの今後をどう見ているか。
さまざまな業務へのデジタル化の適用が進んできています。NS-Libがさらに活用されることにも疑いの余地はありません。ただ、いくつかの課題もあります。その1つはプロジェクトの遂行能力です。グローバル化を推進し海外でもDX関連プロジェクトを遂行するためには、遂行能力を早急に高めなければなりません。
これまでのプロジェクトの遂行では、NSSOLへの依存度が高く、工程や予算、エンジニアなどの管理をお願いしてきました。現状の我々では、単独で海外に出て、地場のITベンダーをまとめ挙げてプロジェクトを遂行させることは、スキル面で非常に困難でしょう。
データ管理にも課題があります。当社のデータカタログでは、用語の統一問題、いわゆる“名寄せ問題”に対処するため、製鉄所ごとの“方言”の使用は許容しつつ、同時に“標準語”も登録する仕組みになっています。しかし“方言”と“標準語”の両方が分かる人にとっては、わざわざ両方を登録するインセンティブが働かないため、標準語の登録が後回しにされる傾向があるのは事実です。
突破口は見えてきています。生成AI技術の活用です。方言が意味するところを学習し、標準語に直すことも生成AI技術であれば、それほど難しくはないはずです。日鉄DXはまだまだ続きます。生成AIなどの新技術も取り込みながら、さらなる改革に取り組んでいきます。