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柏の葉IoTハッカソン、LPWAを使った災害・環境対策アイデアが登場

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2018年2月27日

 優秀賞は、「アクアテラス環境モニタリング」を提案した杉浦 隆幸氏と杉浦 弾氏が受賞した。賞金は20万円で、副賞は最優秀賞と同じである。

 アクアテラスは、雨水の流出抑制を目的に作られた調整池を改修し親水空間としたエリア。杉浦 隆幸氏らは、「大量の藻が発生していることなどから、情報を取得して必要な対策を打つタイミングを明確にするための仕組み」としてシステムを構築した。

 具体的には、水に浮かぶブイを作成し、pHセンサー、水温センサーと色センサーを使って、水の温度やpHと同時に、水の緑色の度合いを図ることで環境をチェックする。ブイは、プラスチックの密閉容器を使って安価に防水対策を施した(写真5)。

写真5:試作した環境モニタリング用のブイ

 実際に設置したところ、「冬季のため水温が低く、水温による問題点は検証できなかったが、pHは変化量に有意性があり、色センサーで得た緑色の割合は評価指標としての可能性がある」と杉浦氏は説明する。同氏は、検証場所や、共に活動できる事業者を募集しているという。

災害に備え植物の電位測定やドローン管理にLPWAを使う

 多くの表彰案件の中で、目を引いたのがIoTメディアラボラトリー賞(賞金10万円)を受賞した、やつ氏の「IoV -Internet of Vegetation-」だ。樹木の地上4メートルと6メートルの位置に、それぞれ東西南北の4方向に電極を設置し、そこから何かを検知しようとする実験システムである。

 きっかけは、やつ氏が「植物の周囲の温度を変化させると電位が変化するという論文を見つけた」こと。そこから、次のような仮説を立てた。

(1)植物の光合成を科学的にコントロールできれば農家の販売価格の最大化を検討できる
(2)樹木から得られる情報で地震や土砂災害を察知できれば避難誘導に役立つ
(3)紅葉や花見の最高の時期や落葉のタイミングを測れれば、観光ビジネスや清掃などの運用の効率化を図れる

 実験では、「電位の変動に何かしらの周期性があることが分かった。ここから意味のある特徴量を抽出できるかもしれない」と、やつ氏は可能性を指摘する。今後は、より多くの種類、より多くの本数の樹木から長期的にデータを取り、日照量などの環境データを合わせて、調査を続けたい考えである。

 入賞は逃したものの、当日発表に参加したTERRA DRONEの「柏の空から描く豊かな街へ〜LoRaWANを活用したドローン管制プラットフォームの提供」も興味深いものだった。

 現状、ドローンの運航管理システムは、Wi-Fi通信などを使っているため、管航続距離が500メートル程度に限定される。ここにLPWAを使うことで、航続距離を伸ばせるとする。災害時の配送や状況監視などにドローンを利用する動きがあるが、その際の2次災害は飛行を認めた自治体の責任になるという。LPWAを使った運航管理システムでマネジメントできれば、ドローンをより有効に活用できそうだ。