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柏の葉IoTハッカソン、LPWAを使った災害・環境対策アイデアが登場

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2018年2月27日

千葉県柏市にあって次世代の環境都市づくりを推進する「柏の葉キャンパス」において、LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークを利用する「柏の葉 IoT ハッカソン」が開催されていた。同ハッカソンの入賞者を表彰するイベントが柏市内の「31VENTURES KOIL)で2018年2月17日に開かれた。同イベントの様子を紹介する。

 柏の葉IoTハッカソン(主催:柏の葉IoTハッカソン実行委員会)は、柏の葉を中心に、東京・本郷にある東京大学からつくば市までをカバーするLPWA(Low Power Wide Area)を利用するもので、カバーエリアとしては「過去最大規模」(主催者)という。

 そのLPWAネットワークを使って、柏市の交通や企業誘致に関する課題のほか、HEMS(Home Energy Management System)や未来の住宅、まち歩きの誘導策、自然と共生する都市空間、農業とIoT(Internet of Things:モノのインターネット)といったテーマに対し、センシングとデータ活用を提案する。同エリアのLPWAは、主催者の1社であるセンスウェイが、LoRaWAN規格に沿った基地局を設置し構築したものである(写真1)。

写真1:センスウェイが設置したLoRaWAN規格の基地局

 表彰に先立ち登壇した、柏市長の秋山 浩保 氏は、「社会の新しい生活を生み出したい。新しいことを始める際には、法や規制の問題も出てくるが、周辺エリアの行政とも連携して、新しい生活を生み出しやすい社会になれば良い。第2回、第3回と続けて開催してほしい」と話した(写真2)。

写真2:柏市の秋山 浩保 市長

自身の体験に基づく提案が高評価を得る

 柏の葉IoTハッカソンで最優秀賞を受賞したのは、「地域IoT実装を推進する教育×避難所用モデルの提案」を出した下川 典子 氏。賞金30万円と、副賞として31VENTURES コワーキングスペースの1年分利用権が贈られた。

 下川氏の提案は、避難所に設置するための情報入力デバイスを製作。男女別の収容人数や、水・食料・電気・トイレのSOS発信、温湿度センサーを組み合わせたもので、同デバイスからデータを入力することで、市内の避難所情報を一覧できる仕組みを実現する(写真3)。

写真3:避難所に設置する情報入力デバイスの案

 同提案のきっかけになったのは、「大雨の際に柏市内のハザードマップを調べたところ、住居近くにある利根川の決壊の危険性に初めて気づいた」(下川氏)こと。実は下川氏は、和歌山県に甚大な被害をもたらした2011年9月の台風12号で、実家が床上浸水の被害にあうという経験をしていた。そこから「市民サイドと行政サイドの両方の苦しみを解決するためのデバイスを開発したかった」(同)という(写真4)。

写真4:最優秀賞を受賞した下川 典子 氏