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DXのリーダー企業はフォローワーの倍の効果を享受、日本はアジア内でも出遅れ、日本マイクロソフトが調査

DIGITAL X 編集部
2018年2月27日

「デジタルトランスフォーメーション(DX)のリーダー企業は、フォロワーの2倍のメリットを享受している」「日本企業はアジア全体の中でもDXへの取り組みに出遅れている」ーー。こんな調査結果を日本マイクロソフトが公開している。アジア15カ国の企業幹部を対象に調査会社のIDCが実施したものである。

 調査は、米Microsoftと調査会社の米IDCでアジア太平洋地域を統括する法人が実施した。対象は、アジア15カ国の企業幹部1560人で、うち日本人回答者は150人だった。回答者の業種は、政府機関、教育機関、金融、ヘルスケア、製造、小売りである。

 調査ではまず、GDP(国内総生産)に対するデジタルトランスフォーメーション(DX)の効果を予測している。2021年までにDXがGDPの年複利成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)を0.4%増加させ、2021年までには日本のGDPの50%がDXによるものになるとする。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI(人工知能)などのデジタル技術を活用した製品/サービスがGDPに占める割合は、2017年の8%が2011年には50%を占めると予測する。

 DXに向けた戦略の策定状況について、回答者のうち79%が「策定している」と回答した。だが、収益の3分の1以上をデジタル技術を活用した製品/サービスで上げている「リーダー企業」となっている企業は7%にとどまった。そのため、DXのリーダー企業は、フォロワーの企業と比べDXのメリットを2倍、享受しているとみる(図1)。この傾向は2020年にはさらに顕著になるという。

図1:デジタルトランスフォーメーション(DX)のリーダー企業は、フォロワーの2倍のメリットを享受している(IDCの資料より)

 DXを進めるうえでの課題としては、「人材とスキル」「プロセス」に関する課題はアジア各国で共通だ。ところが、「IT」や「ガバナンス」に関する課題については、アジアのリーダー企業と日本の企業との間に異なる傾向が見られた。日本企業の場合、「どのIT技術が適切か見極めができない」「適切なITパートナーの選択」「既存システムの保守サポート」「DXプロジェクトに対する投資不足」「幹部のサポートとリーダーシップが不足」といった課題を挙げる声が強い(図2)。

図2:日本企業は「IT」「ガバナンス」の面でアジアのリーダー企業に遅れを取っている(IDCの資料より)

 こうした背景には、「データ資本」に対する理解度の違いがありそうだ。データ資本とは、ビッグデータなど”21世紀の石油”とも言われるデータを活用し、プロセスの自動化や意思決定の最適化を図る考え方。それにより、新たなKPI(重要業績評価指標)の利用が始まっているが、日本企業の場合、「データ司法を用いた売り上げ、ビジネスモデルと生産性」をはじめ、「プロセス・サービス効率」「顧客の口コミ」「製品・サービスのイノベーション頻度」といった項目でアジアのリーダー企業と差が開いている(図3)。

図3:アジアのリーダー企業が使いはじめている新しいKPIを日本企業は導入できていない(IDCの資料より)

 これは投資対象にも現れている。AIやコグニティブ、ロボティクス、クラウドに対する投資はアジア企業全般に旺盛だが、データ資本であるビッグデータへの投資については、日本企業のそれはアジアのリーダー企業より低い(図4)。

図4:日本企業は「データ資本」に投資額がアジアのリーダー企業に比べて低い(IDCの資料より)

 もちろんITを含めた既存資産の有無の影響もありそうだ。アジアのリーダー企業が、DXによって、利益率向上やコスト削減、生産性向上、生産・運用時間の短縮、顧客獲得時間の短縮といった効果に対し2017年時点で大きな刈り取りを期待しているのに対し、日本企業は2020年ごろに効果を仮と売ろうとしている(図5)。

図5:アジアのリーダー企業は2017年時点でDXの効果を刈り取り始めている(IDCの資料より)

 ただし、KPIの設定や、投資対象の見極めといった状況を鑑みれば、2020年のDXの状況を十分に見通したうえで戦略を定めているようにも見えない。これまでのIT活用とは変化の速度が違うことを認識し、DXへの取り組みを加速する必要がありそうだ。