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DXは、経営者、業務部門、IT部門の“三位一体”で推進せよ【DIGITAL X Forum 2019】

経産省『DXレポート』が問う「2025年の崖」の真意と、その乗り越え方

奥野 大児(ライター/ブロガー)
2019年4月3日

DX推進には業務部門のIT武装が必要に

 デジタルを活用したビジネス変革は、どう推進していけば良いのか。そのポイントを青山氏は、「経営者と業務部門、IT部門が“三位一体”でDXの推進サイクルを進めることにある」と指摘し、それぞれに求められる変革を次のように説明する(図2)。

図2:ITの技術負債が「2025年の崖」を生み出す(青山教授のプレゼン資料より)

経営者:モノからサービスに時代が変わるなかで、サービス向けの経営指標を考える
業務部門:バックエンドの業務を変えられる企業文化を育む
IT部門:新しい指標や企業文化を支えられるだけの技術力を持つ

 それぞれが課題の発見・解決にデザイン思考のプロセスを活用し、次の3つの視点で分析すべきとする。

ステークホルダーの分析:だれのために行うのか
ゴールの分析:なぜ行うのか
エンタープライズの分析/シナリオの分析:いかに行うのか

 DXの実現において大切なもう1つの要素が人材である。DXレポートでも「ユーザー企業のあらゆる事業部門でデジタル技術を活用し,事業のデジタル化を実現できる人材」の育成を訴えている。

 そこでは、(1)エンドユーザー/顧客、(2)ユーザー企業(業務部門)、(3)ユーザー企業(IT部門)、(4)ベンダー企業の4つの組織をつなぎ合わす3つの共創ループに基づいてDXの推進人材を育成すべきとされている。

 ただし青山氏は、「いきなり、それはできない」と断言する。「まずは既存システムを維持・保守しながら、スキルを再定義/シフトし、デジタルビジネスやデジタルプラットフォームの分野に変えていくようにする。業務部門の人材がIT武装し、ITを使いこなせる人材になることでDXを推進していく」(同)ことを推す。

 そのために業務部門の人材には、「ビジネスモデルのデザインやAI(人工知能)、機械学習・ソフトウェア工学などを学んでほしい」(青山氏)とする。IT部門の技術者なら当然、デジタル技術分野へのシフトが必要になる。

 ベンダー企業においては、「いわゆる“PoC(概念実証)貧乏”に陥らないために、問題解決型から問題発見型へアプローチを切り替えることが、デジタルビジネスやDXを主導する人材の育成につながる」(同)とする。

DX推進は国レベルの取り組みに

 青山氏は、経産省が2018年度に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」が設置した背景には、上述してきた「2025年の崖」に対する大きな危機感があったと明かす。

 研究会の成果の1つである「DXレポート」が真に提言しているのは、「経営者のリーダーシップ、そして経営者・業務部門・IT部門の“三位一体”による経営改革である。それは、ディスラプションされないように進めると同時に、持続的な成長も手に入れる取り組みだ」(同)。

 DX推進に向けては、国もサポート活動を始めている。DXの推進は、「企業単位やビジネス単位だけでなく国レベルでの取り組みになっている。『2025年の崖』を越える成長を果たそう」と青山氏は訴えた。