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医療機器のフィリップスがMaaS参入、移動式クリニックなどを自治体などと開発へ

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年4月19日

医療機器メーカー蘭フィリップスの日本法人は、ヘルスケア領域における移動サービスを自治体などと連携しながら開発・提供すると2019年4月19日に発表した。そのために、トヨタ自動車とソフトバンクの合弁会社でMaaS(Mobility as a Service:サービスとしての移動)事業に取り組むMONET Technologiesが設立した「MONETコンソーシアム」に参加する。

 フィリップス・ジャパンが手がけるのは、地方自治体が抱えるヘルスケア領域での課題を解決するためのモビリティサービス。健診や診断のための施設を備えた自動車をオンデマンドで走らせることで、住民宅と医療機関の距離や診察時間など物理的な関係性を見直し、ヘルスケア関連サービスを利用しやすい環境を生み出す(図1)。

図1:ヘルスケア関連サービスを提供できる施設を車内に設け、施設を移動させる

 具体的には、(1)健康コンサルティング、(2)簡易クリニック、(3)製品・デバイスの提供、(4)ハートセーフモビリティといったサービスを想定している(図2)。

図2:フィリップス・ジャパンが想定する移動式ヘルスケアサービスの例

 健康コンサルティングは、車内でのバイタル情報などの収集や、遠隔での対面診断の予約と実施など、簡易クリニックは、医療従事者が乗車して実際に診療する(図3)。

図3:診断・診療のための施設のイメージ

 製品・デバイスの提供では、顔認証などで本人を特定したうえで健康機器やサプリメント、医療機器などを提供する。ハートセーフモビリティはAEDの車内搭載や配送である。いずれも関連する規制に沿っているかは確認中とする。

 これらサービスを提供するための基盤にMaaS(Mobility as a Service:サービスとしての移動)を位置付ける。サービスを提供するための機器を搭載した車両の予約や運行、利用データに基づく各種サービスの提供などを支える。

 そのため、MaaSのためのデータ基盤の構築・運用などの普及を目指す「MONETコンソーシアム」に参加する。同コンソーシアムは、トヨタ自動車とソフトバンクの合弁会社であるMONET Technologiesが設立したもので、ホンダや日野自動車といった自動車メーカーや各地の自治体、関連サービス事業者などが参加している。

 フィリップスは今後、自治体や企業と連携しながら、各種サービスの具体化を図り実証実験などに取り組み、交通や小売り、物流、食などの分野とヘルスケアを組み合わせたモビリティサービスの実現を目指す。すでに複数の自治体・企業と協議を始めているとしている。

 その一環として、仙台市にイノベーション拠点となる「Philips Co-Creation Center」に2019年5月に開設。コンセプトを表すモックアップ車を常設する予定である。

 フィリップスは、少子高齢化が進む日本においては、医療費の増大といった課題だけでなく、過疎地を中心とした公共交通機関やヘルスケア関連施設などの維持・運営が困難になっているとし、固定された施設によるヘルスケアサービスの提供だけでなく、サービス拠点側が移動することで、より住民ニーズに応じたサービスの最適な配置が可能になると考えている。

 なお具体的なモビリティサービスは2019年度にも開始し、2020年以降はサービスを横展開しラインナップを拡大する計画である。